進行大腸がんの肝転移にラジオ波焼灼療法は?

回答者・小池幸宏
関東中央病院消化器内科部長
発行:2014年9月
更新:2014年12月

  

1年前に直腸がんが見つかり、手術と術後補助化学療法を受けました。手術後は、食事があまり食べられず、化学療法で体力がかなり低下しています。このほどの検査で肝臓に小さな転移が4つ見つかりました。1㎝、7㎜、5㎜、4㎜です。切除手術のほかに、ラジオ波焼灼療法という治療法があり、体の負担も少ないと聞きました。ラジオ波焼灼療法と手術では、治療効果はどちらのほうが期待できるのでしょうか。

(60歳 女性 神奈川県)

手術が第一だが、体力低下中の治療はラジオ波で

関東中央病院消化器内科部長の
小池幸宏さん

この方の場合、年齢が60歳でありお若いこと、転移が肝臓に限られていて4つであることから、手術が治療選択の基本的な考え方になります。手術ならば、4つの転移を完全に取り除く治療ができるからです。

しかしながら、体力がかなり落ちているということですので、ある程度体力が回復するのを待ってから、手術を受けるのがよいでしょう。この間に、もしも一番大きい1㎝の転移が、1.5㎝、2㎝になったとしても、4つの転移とも手術で取り去ることができます。ですから、体力が回復するまで手術を待つことには問題はありません。

それでも手術は避けたいという意向をお持ちの場合には、ラジオ波での治療も検討に値すると考えられます。

ラジオ波焼灼療法は、超音波機器で患部を確認しながら、肝臓の腫瘍(転移部)に針を刺し、針から発生させた熱の力でがんを死滅させる方法です。適応は一般的に、3㎝までのがんが3個以内と言われています。最もよい適応は、2.5㎝ぐらいまでのがんです。

特にこの方の場合は、一番大きいものが1㎝、一番小さいものが4㎜です。4つの転移ともが超音波で画像がしっかりとらえられるタイプのものであれば、大きさの点からいって、これらはラジオ波焼灼療法でもほぼ100%を治療できるという、手術に匹敵する治療効果が期待できます。

治療時間は1時間もかからず、傷口も数㎜の傷が何カ所かつくだけです。体力が落ちた状況であっても、治療によるさらなる体力の低下もほとんどみられないと考えられます。

また、ラジオ波焼灼療法の場合は、4箇所を治療した後に、別の肝転移が現れた場合でも、再びラジオ波を行うことはできます。半面、手術後に新たな肝転移が現れた場合は、患者さんにとってはつらいことになります。

ただし、ラジオ波焼灼療法では、治療した箇所に腫瘍が残る危険性があることは、完全には否定できません。そのため、100%の治療ができるとは言い切れない面があるのですが、この方の場合は転移サイズが小さいため、きちんとした治療ができる可能性も高いです。体力が低下している状況では、まずラジオ波焼灼療法で治療して様子を見るというのも1つの選択かと思います。

それ以外の方法としては、別の抗がん薬で治療する方法もありますが、体力に問題があるとすれば、それもすぐには選択しにくいでしょう。このように、体力が改善するまでの間に治療を望まれるのであれば、ラジオ波焼灼療法で治療して様子を見るというのがよい方法になります。

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