腎機能低下。使える抗がん薬はないか

回答者・大矢雅敏
獨協医科大学越谷病院外科教授
発行:2015年6月
更新:2015年9月

  

主人(68歳)のことでご相談です。主人は、昨年(2014)7月に大腸がんが発覚し、肝臓に転移が見つかりました。8月に手術をし、大腸と肝臓にあるがんを切除しました。手術後、主治医から「腎臓の機能が低下していて使える抗がん薬が限られている」と説明があり、UFT+ロイコボリンによる抗がん薬治療を行いました。

その後、今年3月に定期検診したところ、CT検査で、肝臓に無数の小さいがんがあることがわかりました。今後の治療方針として、再度UFT+ロイコボリンによる抗がん薬治療を行って、もし効果が見られないようなら、あとは緩和治療しかないと言われております。腎臓が悪くても、他に使える抗がん薬はないでしょうか。

(65歳 女性 岩手県)

腎機能をチェックしつつ、減量して化学療法を行うことも可能

獨協医科大学越谷病院外科教授の
大矢雅敏さん

この方の場合、どの程度腎機能が低下しているかが問題になります。例えば、血液透析が必要といった状態であるならば、化学療法を行うことは難しいかもしれません。ただ、UFT+ロイコボリンによる治療を行ったということは、そこまで腎機能が低下していないと思われます。

腎機能の値として、血清クレアチニン(Cr)値が2mg/dL以下、もしくは推算糸球体濾過量(estimated GFR)が30mL/分/1.73㎡以上であれば、ある程度の抗がん薬治療を行うことができます。従って、通常の抗がん薬の量を少し減らしながら、治療を行うことは可能だと思います。

例えば、比較的副作用の少ないゼローダ+アバスチンといった治療から開始し、病状が悪化してきたら、それにエルプラットまたはイリノテカンを上乗せすることを検討しても良いでしょう。その際、血液検査を頻回に受け、腎機能の状態をチェックしながら受けることが大切です。

私なら、まずは通常の50%の量で抗がん薬治療をスタートし、血液検査などで腎機能が悪化しないのであれば、その量を80%に上げていくといったように、様子を見ながら治療を進めていくと思います。

UFT=一般名テガフール・ウラシル ロイコボリン=一般名ホリナートカルシウム 推算糸球体濾過量(estimated GFR)=腎臓にどれくらい老廃物を尿へ排泄する能力があるかを示しており、この値が低いほど腎臓の働きが悪いということになる。estimated GFRは血清クレアチニン値と年齢と性別から算出できる ゼローダ=一般名カペシタビン アバスチン=一般名ベバシズマブ エルプラット=一般名オキサリプラチン イリノテカン=商品名カンプト/トポテシン

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