便潜血陽性と診断されたが
会社の健康診断で便潜血陽性と診断され、速やかに精密検査を受けてください、と言われました。大腸内視鏡で覘いて見るとポリープらしきものが多数あり、生検の結果、腸管気腫症(ちょうかんきしゅしょう)と診断され、ほっておいても問題はない、と医師から言われました。
私は痔でもないのに、便潜血陽性なのはどうしてなのでしょうか。また、腸管気腫症の原因はわからないということですが、本当にほっておいても大丈夫なのでしょうか。
(70歳 男性 東京都)
A 腸管内の気泡が破れ、便潜血陽性と診断されたのかも
外科教授の大矢雅俊さん
腸管気腫症は腸管の壁に小さな気泡が発生する疾患で、発生の仕組みとしては腸管内の圧上昇によって気体が腸壁に入り込む、肺からの空気が縦隔(じゅうかく)や後腹膜(こうふくまく)から到達する、細菌などによって腸管壁内にガスが発生することがあります。
腸管の炎症や腸閉塞、肺気腫などが原因である場合が多いのですが、このご相談者さんのように原因がハッキリしないこともあります。
原因がハッキリしない腸管気腫症は非常にまれで、私自身は過去に1人診察したことがある程度です。内視鏡でみると腸内に無数のポリープ状のものが出来ていますが、その中身は窒素ガスの場合が多いのです。
腸管に原因疾患がある場合には、その原因に対する治療が必要になる場合もあります。
原因がハッキリしない腸管気腫症の場合、まれに腸閉塞の原因になることがありますが、担当医が言われるように、ほっておいても普通は問題ありません。
ただし、腸管気腫が腸の外側に破れると、レントゲン検査やCT検査で腸の外に気体が見られることがあります。その場合には胃や大腸に穴があいて腹膜炎を起こして緊急手術が必要になる消化管穿孔(せんこう)との見極めが必要になることがあります。
また、便潜血とは便の中に血が混じっている状態のことです。ですから、痔では便の表面の一部に血液が付着することが多く、便潜血陽性の原因とは限りません。
また、異常がなくても腸粘膜からの微量の出血はあるもので、便潜血陽性と判定する基準は便に混じっている血液の量によって決められています。
ご相談者の場合、腸粘膜の下に気腫が出来ているので、何かのはずみで、気腫が内側に破れて、少量の出血が起こり便潜血陽性と判定されたのかもしれません。
どちらにしても、大腸内視鏡で腫瘍は見つからなかったのですから、当面、大腸がんの心配はないということです。