分子標的薬の副作用、ざ瘡様皮疹を抑えるには?
進行性の大腸がんと診断され、抗EGFR阻害薬*という種類の分子標的薬を使う治療を始めることになりました。ところがその薬剤には、顔にニキビのような皮疹ができるという副作用があると聞き、心配しています。私は仕事をもっていて、治療中も続けていくつもりです。営業職で外回りが多いので、そういった皮疹などの副作用を少しでも抑えていければと思っているのですが、なにかよい方法はないでしょうか。
(東京都 女性 46歳)
A 抗菌薬、清潔・保湿で対策
抗EGFR阻害薬による皮膚の副作用の代表的なものにざ瘡様皮疹があり、ニキビのような皮疹が顔面などに7~8割程度の方で出ます。
顔面など目立つところに出てくるため、ご相談者のように患者さんのQOL(生活の質)を考慮し、現在ではEGFR阻害薬の投与と同時に抗菌薬であるミノマイシン*が予防的に処方されることが多くなり、これによってざ瘡様皮疹の症状や頻度が軽くなるなどの効果を上げています。
患者さんがご自身でできるケアは清潔に保ち、保湿をしっかり行い、無理のない範囲で紫外線を避けて遮光することです。
女性の方ですと、ファンデーションをされると思いますが、ファンデーションの油分が刺激になることもありますので、なるべく油分の少ない低刺激なものを選ぶと良いかと思います。また、汚れで毛穴を塞ぐことのないように洗顔は念入りにしましょう。洗顔後はたっぷり保湿します。抗EGFR阻害薬を使用する患者さんは多くの場合、病院からヘパリン類似物質のヒルドイドローションなどの保湿剤が処方されると思いますので、しっかり保湿してください。
また、ざ瘡様皮疹が治った後の皮膚には、肌荒れや赤み、色素沈着が残ることがあります。ざ瘡様皮疹の痕を残さないためには、やはり皮疹が出たときに症状を悪化させないことが重要です。日頃から皮膚の清潔を保って保湿をし、外出するときは日焼け止めを塗るなど無理のない範囲で遮光してください。それでも症状が軽快しない際には主治医や皮膚科専門医に相談して下さい。
ざ瘡様皮疹は、多少の個人差はありますが、投与後1週間~3週間くらいから現れ、だいたい6週間~8週間を過ぎたころには落ち着いてきます。皮疹をくり返さなければ、それから数カ月程度で、痕も徐々に消えていきます。
化学療法の皮膚症状はケアをきちんと行って、がん治療をしっかり完遂することがとても大切です。
*抗EGFR阻害薬=がん細胞の増殖・成長に関わるEGF(上皮成長因子)という物質がその受け皿となるEGFR(上皮成長因子受容体)と結合することを防ぎ、がんの増殖を抑えたり、がんの細胞死を誘導する薬剤 *ミノマイシン=一般名ミノサイクリン塩酸塩