鎖骨付近のリンパ節に再発。今後の治療法、根治の可能性は

回答者・出江洋介
がん・感染症センター都立駒込病院食道外科部長
(2015年11月)

1年前、65歳になる母が食道がんのステージⅢ(III)と診断され、手術が可能と言われたのですが、がんが声帯の近くだったので放射線化学療法を選びました。その後の検査の結果がんはなくなったのですが、今年になって、鎖骨付近のリンパ節に再発。

もう根治は望めないのでしょうか。今後の治療法はどのようになるのでしょうか。

(36歳 女性 東京都)

原発巣に再発がなければ、手術で根治が期待できる

都立駒込病院食道外科部長の
出江洋介さん

食道がんのステージⅢ(III)はリンパ節転移がある場合と、リンパ節転移はないものの、がんが食道周囲の組織まで広がっている場合(T4)があります。後者の場合は化学放射線治療が標準治療です。

相談者のお母さんは頸部食道がんに対して放射線化学療法を行ったということですので、リンパ節再発が認められる鎖骨付近にも放射線は当たっていると思います。ですから再度同じ部分に放射線照射をすることはできません。

鎖骨付近(頸部)のリンパ節は、「癌取扱い規約」では2群のリンパ節に属し、食道から比較的近いリンパ節です。この場合日本のガイドラインでは、サルベージ手術が推奨されていますが、原発巣に再発がないのであれば、手術でリンパ節だけを摘出するのがよいと思います。ただ、どのぐらいの確率で治るかなどの根拠はなく議論もあります。

頸部リンパ節の切除は大きな侵襲ではないし、経験上、根治も十分期待できます。内視鏡検査などで原発である食道にがんがないことを確認できたら、手術に臨まれるとよいと思います。