分子標的薬で手・足・臀部のただれがひどい
4年ほど前、左腎臓がんと診断されました。そのとき、すでに左腕部の骨と鎖骨に転移していて、主治医から「進行性がん末期」と言われました。左腎臓の手術と、左腕部の人工骨挿入手術を受け、鎖骨は放射線治療を受けました。その後、2年前からインターフェロンの投与を受けてきましたが、2008年6月に、高熱と貧血で再入院し、8月から分子標的薬ネクサバール(一般名ソラフェニブ)による治療を受けていました。2008年10月はじめから、手・足・臀部にただれがひどく、現在、その治療のため、ネクサバールの投与を控えています。今後、どんな治療を続けたらよいのでしょうか。ご意見をお聞かせください。
(宮城県 女性 62歳)
A 治療効果をみつつ、減量、休薬をしながら服用を
ネクサバールの副作用の1つとして、手足症候群(ハンドフットシンドローム)があります。ご相談者は、この副作用に苦しんでおられるのだと思います。
この副作用は、ネクサバールを服用すると、半数以上の方に出現すると報告されています。手足に物理的な負荷をかけて、刺激したときに、症状が出やすいと言われています。たとえば、重い紙袋の紐を持ち上げて、手に物理的な圧迫を加えたときなどに、副作用が現れます。ですから、手足に負荷をかけないようにするなど日常生活での注意が大切です。手足への圧迫を和らげるために、手袋をするとか、厚手の靴下などを履けば、症状が和らぐかと思います。
残念ながら、こうした副作用を完全になくすことは、困難です。ただし、この副作用は、自分の目で見てわかります。薬の効果と副作用を体感できるので、その効果と副作用をはかりにかけて、取り組むことが可能です。現在の症状と再発の様子がわかりませんが、ネクサバールの服用を中止すれば、副作用は改善します。今後は、治療効果をみながら、ネクサバールを減量するとか、休薬をしながら、服用するのがよいと思います。
ネクサバールに代えて、新しい分子標的薬スーテント(一般名スニチニブ)を使うのも選択肢の1つですが、やはり、手足症候群の副作用は現れる可能性が高いと思います。ネクサバールとスーテントは、同じマルチキナーゼ阻害薬なので、同様の副作用が出やすいと考えられています。また、スーテントは、手足症候群だけでなく、心不全や高血圧などの副作用も現れることがあり、副作用は、スーテントのほうが強いと言えます。ですから、単純に、スーテントに切り替えればよいというものではありません。さらに、現在、新しい分子標的薬トーリセル(一般名テムシロリムス)を用いた臨床試験が日本で進行中です。アバスチン(一般名べバシズマブ)の腎がんへの適応拡大も検討されていますが、いずれも、実際に使用できるのは2~3年先になると思います。