腎臓がんの手術法は何を選択すべきか

回答者:島田 誠
昭和大学横浜市北部病院 泌尿器科教授
発行:2009年1月
更新:2013年12月

  

右側の腎臓にがんが発見されました。ステージは2期で、がんの大きさは4センチ強×3センチほど、がんは腎臓の周りの脂肪に入り込んでいるが、リンパ節転移や遠隔転移はないそうです。手術法には大きく、開腹手術、腹腔鏡手術、ミニマム創手術の3つがあり(いずれも腎摘除術)、そのうち腹腔鏡手術を勧められていますが、このままこの方法で受けてよいのか迷っています。腹腔鏡手術は開腹手術などに比べ、体への負担が小さいとは聞きましたが、具体的なことを教えてください。負担が小さいことはありがたいのですが、私は何より完治することを望んでいます。

(群馬県 男性 65歳)

A 安全性は一般的には開腹手術が高い。主治医の得意な方法を確認

腎臓は被膜という薄い膜に包まれています。その腎臓は脂肪に包まれていて、脂肪はさらにジェロータ膜という膜に包まれています。2期の腎臓がんは、がんが被膜を飛び越えてはいるものの、ジェロータ膜の中にとどまっている状態です。ちなみに、がんが被膜の中にとどまっているのであれば、1期の腎臓がんです。

片側の腎臓をすべて切除する腎摘除術(腎全摘術)では通常、ジェロータ膜ごと切除します。従って2期の腎臓がんは、腎摘除術を行えば、がんを取り切れることになるため、手術が適用されます。

また、がんの最大径が4センチを超えている場合にはがんがある側の腎臓をすべて切除したほうがよいというのが現在のコンセンサスであるため、その点でも、腎摘除術は勧められます。

次に検討すべき問題は、ご相談にある手術の方法です。開腹手術は最も歴史のある手術法で、多くの医療施設で実施されています。通常、腹部を8~10センチほど切開して行い、腹腔鏡手術やミニマム創手術に比べ、一般的には手術の安全性は高いのが特徴です。

腹腔鏡手術では、ポートと呼ばれる孔を開け、そこから腹腔鏡や手術器具を挿入します。さらに炭酸ガスを腹部に注入し、おなかを膨らませ、手術操作のスペースを確保します。その後、内視鏡を挿入し、内部の映像をモニター画面で見ながら手術を進めます。

腹腔鏡手術のメリットは、腹部の傷の大きさとその傷口の痛みが小さいことです。また、体力が回復するのが比較的早く、一般的には、開腹手術の場合よりも早めに退院することができます。

また、複数の医師や看護師が1つの画面を見ながら手術をするため、状況を共有しつつ手術することができ、ミスの防止や的確な判断をするのに役立ちます。この点は、ミニマム創手術も同様です。

腹腔鏡手術のデメリットは、どこの施設のどの医師でもできる手術ではない点です。まだあまり普及していないため、高い技術を持つ医師は限られています。

また、腹腔鏡手術では対応できないアクシデントが起こることもあり、その場合は速やかに開腹手術に移行します。腹腔鏡手術では、こうしたことも起こりうることを知っておく必要があります。

なお、腎臓がんの腹腔鏡手術には複数の方法があり、施設や医師、患者さんの状態などによって、とられる方法は異なります。また、腎臓を取り出す際に、3~4センチほど、腹部を開腹する場合も少なくありません。

ミニマム創手術とは、ごく簡単にいえば、開腹手術と腹腔鏡手術の両方の要素を備えた手術法です。内視鏡を使い、モニター画面を見ながら手術をする点は腹腔鏡手術とほぼ同じですが、4~5センチほど開腹します。また、腹腔鏡手術のように炭酸ガスを腹部に注入することはありません。

ご相談者は完治することを最も望んでいますから、一般的には安全性の高い開腹手術を勧めます。しかし、主治医が腹腔鏡手術を勧めているということは、これまでの実施数が多く、得意な手術法である可能性もあります。そうであるなら、主治医の提案どおり、腹腔鏡手術を受けるのもよいと思います。主治医に腎臓がんの腹腔鏡手術の実施数などを聞いてみて判断されてもよいでしょう。

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