腎臓がんの分子標的薬の効果や副作用は?

回答者:島田 誠
昭和大学横浜市北部病院 泌尿器科教授
発行:2008年10月
更新:2013年12月

  

父(60歳)のことでご相談します。父は転移性の腎臓がんで、手術は受けられず、インターフェロンの注射を受けています。がんが半分ほどに縮小するなど、効果が見られますが、しばらくすると、効果が薄まる可能性が高いと主治医に言われています。効果が低くなった場合には、インターフェロンにインターロイキン2を加える方法もあるそうですが、その効果も長期的に続くかは保証できないと言われ、父ともども不安です。今年になって、分子標的薬という薬が2つほど腎臓がんに使えるようになったと聞きました。これらはどんな薬でしょうか。インターフェロンやインターロイキン2が効かなくなった場合、これらの分子標的薬で治ったり、よくなったりする可能性はあるでしょうか。

(鹿児島県 女性 33歳)

A 肺転移に期待できるが、副作用は多い

お書きのように、インターフェロンの効果はいつか消えてしまい、転移巣が増えたり、転移巣の大きさが大きくなってきたりします。インターフェロンの効果がいつまでもつかは、個人差があって一概には言えません。

インターフェロンが効かなくなっても、インターロイキン2を使えば効果が出ることが多くあります。この場合、インターフェロンにインターロイキン2を加える併用療法が一般的には行われますが、インターロイキン2を単独で用いることもあります。ただし、インターロイキン2も長期的に効き続けるのは難しく、効果は徐々に薄れていきがちです。

インターロイキン2も効かなくなった場合は、最近では分子標的薬を使用することもあります。ネクサバール(一般名ソラフェニブ)とスーテント(一般名スニチニブ)が今年、腎臓がんに承認された分子標的薬です。これらはいずれも内服薬で、血管新生阻害剤でもあります。

がん細胞は発育する際、血管を新たに発生させ、血管を伸ばしていきます。ネクサバールやスーテントは、その血管新生を阻害し、がんの増大を抑制する薬剤です。これらの分子標的薬の有効性は、インターフェロンやインターロイキン2よりはよい成績が出ていますが、劇的な効果があるとまでは言えません。

また、肺転移には効果を期待できますが、骨転移にはほとんど効きません。「転移性の腎臓がん」とお書きですが、どこに転移しているかによって、適応になるかならないかは分かれます。

副作用が起こる頻度は比較的高く、手足などの皮膚症状、間質性肺炎、脳出血、消化管出血、口腔内出血、心筋虚血、心筋梗塞、膵炎、肝機能障害などが起こりえます。とくに皮膚症状は80パーセントほどの人に見られます。頻回かつ重い副作用も起こりがちですから、ネクサバールとスーテントは、高齢者や体力の弱っている患者さんには使用を控えるべきです。

また、これらの薬剤は、1度使用すると効果がなかった場合でもなかなかやめられません。やめるとリバウンドが起きて、病状がより進行してしまう可能性があるためです。それに加えて、非常に高額な薬剤で、3割の自己負担としても、ひと月30万円ほどの薬剤費がかかります。

功を奏する患者さんももちろんいますが、医師としては、使いづらい薬剤であることも確かです。ネクサバールとスーテントの使用に関しては、前記のことをお知りになった上で主治医と一緒にご検討ください。

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