腎全摘後、肺に複数の影が。今後の治療法は

回答者:中澤 速和
東京女子医科大学東医療センター 泌尿器科准教授
発行:2007年10月
更新:2013年12月

  

1年前に、左の腎臓がんの全摘出手術を受けました。手術は成功しました。腫瘍の大きさは直径6センチで、ステージ1との説明を受けました。ところが、最近、検査で肺に影が複数あると言われました。インターフェロン療法を受ける予定ですが、知人から新しい分子標的薬なども有効だと聞いています。今後の治療法について、アドバイスをしてください。

(茨城県 男性 54歳)

A 手術治療が確実だが、インターフェロン療法も

ご相談者は54歳と若いですし、術後1年で肺の影が見つかったとのことですから、肺への転移と考えられます。ここで2つの考え方があります。

1つは、複数の影があるとのことですので、腫瘍の大きさにもよりますが、外科的に摘出が可能なら、手術で摘出したほうがよいと思います。腎臓がんの場合、転移であっても手術治療が最も確実な治療法です。

もう1つ、切除ができないときは、スミフェロンまたはオーアイエフ(一般名インターフェロン)という薬剤を週3回自宅で自己注射するインターフェロン療法を行います。奏効率(腫瘍を小さくする割合)は20パーセントほどで、1年後に悪化しない割合は30~40パーセントです。また、2007年末から2008年春には、日本でもスーテント(一般名スニチニブ)と、ネクサバール(一般名ソラフェニブ)の2つの分子標的薬が承認される予定です。分子標的薬はがん細胞自体の増殖に関わる仕組みを抑える薬と、がん細胞自体でなく、がんに栄養を与える血管ができるのを抑える薬があります。この2つの薬は、後者のタイプの薬です。

米国の臨床試験では、スーテントのほうがネクサバールよりも治療成績が上回り、第1選択はスーテント、第2選択はネクサバールとなっています。日本では臨床試験が進行中ですが、スーテントを常用量用いると、下痢や、白血球数および血小板数の低下、甲状腺の機能低下などの副作用が出るとの報告があります。ネクサバールにも下痢などの副作用がありますが、スーテントよりも程度は軽いようです。

日本では、ネクサバールのほうが先に認可される見込みです。また、副作用対策などから、認可されても分子標的薬を使用できる施設は限られると思います。

最近、スミフェロンまたはオーアイエフは、組織型が淡明細胞がんで、小さな肺転移で、若くて活動性のある人には効く可能性が高いことがわかってきました。

ご相談者の場合には、現時点での結論から言いますと、組織型が淡明細胞がんであれば第1選択はスミフェロンまたはオーアイエフでよいと思います。

そして、スミフェロンまたはオーアイエフが効かなくなった場合には、ネクサバールもしくはスーテントを用います。新しい分子標的薬は、スミフェロンまたはオーアイエフが効かなくなった場合にも有効です。長期生存率はわかっていませんが、1年後に悪化しない割合はおよそ50~60パーセントです。

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