早期の腎盂尿管がんでも、腎尿管全摘除術を受けるべきか

回答者:島田 誠
昭和大学横浜市北部病院 泌尿器科教授
発行:2009年1月
更新:2013年12月

  

早期がんである表在性の腎盂尿管がんと診断されました。がんのある左側の腎臓と尿管をすべて切除する腎尿管全摘除術という手術を勧められています。インターネットなどで調べてみると、表在性の腎盂尿管がんでは内視鏡手術を行うこともあると書かれています。内視鏡手術で治療できないでしょうか。またもし外科手術を受けるとしても、左側の腎臓と尿管をすべて切除するのではなく、がんだけを取るなど、小さな手術では治らないでしょうか。もし腎尿管全摘除術を受けた場合、片方の腎臓だけで、何か支障は起こりませんか。

(鳥取県 男性 62歳)

A 尿管の壁が非常に薄いなどの理由で、内視鏡手術は適さない

尿管の壁は非常に薄く、約2ミリほどです。そのため、内視鏡で病巣を切除しようとすると、尿管壁に孔を開けてしまう危険性が高くあります。尿管壁に孔が空くと、尿が尿管の外に出てしまい、がん細胞が飛び散り、遠隔転移を起こす危険性が高まります。

また、尿管の粘膜は腎臓の腎盂、腎杯から膀胱の入口まで、1枚の膜のようになっています。そのため、尿管にがんが認められたということは、腎盂、腎杯から膀胱の手前に至るまで発がんする素因を有しているということです。こうした理由から、腎盂尿管がんは早期であっても、がんのある側の腎尿管全摘除術が一般的に行われています。ただし、米粒ほどのごく小さながんだけが確認されているのなら、まずはその部分だけを内視鏡下で鉗子を使って切除する方法もあります。この方法では、尿管壁に孔を開ける危険は低いといえます。再発した場合は、外科手術を検討するとよいでしょう。

また、早期の腎盂尿管がんで、がんが小さければ、BCG療法を行うこともあります。BCGを腎盂尿管に注入し、がんを含めて、腎盂粘膜を焼きます。

しかし一般的には、やはり腎尿管全摘除術が適用になります。

また、腎臓は1つ切除しても、日常生活には支障がありません。飲酒もスポーツも、問題なくできます。問題が起こりうるのは、残った腎臓に何らかの病気が発生した場合だけとお考えください。

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