良性ののう胞や骨内脂肪腫はがんに進行するか?

回答者:井上 克己
昭和大学横浜市北部病院 泌尿器科准教授
発行:2011年8月
更新:2013年10月

  

8年前、「のう胞性腎細胞がん」を発症し、部分切除しました。その後、6年前に肺転移したためインターフェロン療法を行い、肺の腫瘍の増大は止まりました。しかし、3年前に骨転移が判明し、骨移植手術を受けました。現在、転移再発はしていないため治療はとくにしていませんが、腎臓にあるのう胞が少しずつ大きくなっており、足にも骨内脂肪腫があります。これらががんになる可能性はありますか。

(長野県 男性 47歳)

A のう胞や骨内脂肪腫はがんとは別物。がんには進行しない

VHL症候群といって、のう胞のような腎細胞がんが発症する遺伝性の病気があります。そういうタイプの腎がんだと、繰り返し何回ものう胞状の腎がんが出てくる場合があります。

しかし、通常ののう胞であれば、大きくなっただけで腎がんになることはありません。腎臓ののう胞はほぼ半数の人が持っています。のう胞とのう胞性腎がんは別物です。のう胞ががんになることはありません。安心してください。

のう胞とのう胞性腎がんを見分けるときは、のう胞の壁の性状と、造影効果があるかどうかで診断します。のう胞の壁が厚く、造影CTで不整に造影される場合は、悪性の可能性があります。

しかし、判断が難しい例では、本当に悪性かどうかは手術して病理検査をしてみないとわかりません。

骨内脂肪腫もがんに移行することはありません。しかし、こちらも小さいものだとレントゲンでは診断しにくいので、CTで見るしかありません。骨内脂肪腫は大きくなると空洞になり骨折の心配があるため、注意してください。

いずれも主治医と相談しながら、経過観察を続けてください。

のう胞=内に液が詰まった水袋のような状態のものをいう。なかの液は無色透明で、血液の上澄み(血漿)に近い成分が入っている
VHL症候群=眼、脳、脊髄、副腎などの部位において血管が異常に増殖する、まれな遺伝性の疾患。VHL症候群の患者では、腎がんの発生リスクが高くなる。フォン・ヒッペル-リンドウ症候群とも呼ばれる

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