肝がんに有効な治療法は?
肝がんと診断されました。肝がんは、抗がん剤が効きにくいと聞きました。最近、肝がんに効きやすい薬剤も出てきたそうですが、今後どのような治療をするのか、またどのくらい有効かを教えてください。
(熊本県 男性 58歳)
A 肝機能の状態によって治療法も異なる
肝がんの治療には手術、ラジオ波焼灼療法、血管内治療などがありますが、どれを選ぶかはがんの大きさと数、それと肝臓の機能によって変わります。
がんが3センチ以下で3つ以内ならラジオ波焼灼療法が選択されますが、それを超えれば手術、血管内療法といった治療法になります。がんのある場所がまとまっていて、肝臓を部分的に切除できる場合は手術、がんがいろんな場所にある場合は血管内療法になります。肝がんの治療は、このようにがんの大きさと数、場所によって治療法が変わるのですが、もう1つ治療法を決定する際に考慮されるのが肝機能です。
肝がんとは正常な肝臓にできることはほとんどなく、C型肝炎やB型肝炎などの肝炎ウイルスによる感染、肝硬変、アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪性肝炎など、必ずと言っていいほど、その背景になんらかの肝障害があります。したがって、肝がんの治療を行ったあとの肝臓の機能が重要になるのです。
肝硬変の肝機能は、良い順からA、B、Cの3段階に分けられます。Aならどの治療も選べます。Bならラジオ波や血管内治療が選ばれ、Cではどの治療にもリスクが高くなります。治療によってさらに肝臓を傷めてしまう場合があり、積極的な治療を行えないこともあります。肝がんではたとえ治療によってがんを攻略できたとしても、肝機能の障害によっては予後が悪くなる場合もあるのです。
最近、肝がんに有効とされる薬剤が出てきました。ネクサバール*という分子標的薬です。今まで肝がんは抗がん剤が効きにくいとされてきましたが、ネクサバールは、がんが栄養や酸素を得るために新しく生やす新生血管を阻害したり、がんが増殖するのを防ぐ働きがあり、血管が豊富な肝がんに効きやすいことがわかりました。
といってもその有効率はがんが大きくも小さくもならないという効果が出るのが10~30パーセント。がんが完全になくなる(完全寛解)
のはたったの1パーセントです。手足症候群と言われる副作用がほとんどの人に出ること、また薬の値段が非常に高いことなど、残念ながら使いやすい薬とは言えません。
今後はこのネクサバールがどんな人に効くのか、遺伝子レベルで診断していけるような個別化治療が求められますが、今はまだ研究段階です。
ネクサバールは、それ単独では前述のとおり有効性が高くないため、手術や血管内治療、ラジオ波焼灼療法による治療後に、残っているがんを叩くための補助化学療法として使われる場合もありますが、このような使い方は現在保険適応ではありません。
*ネクサバール=(一般名ソラフェニブ)