再発予防に免疫療法を受けたい
肝細胞がんのⅠ期と診断されました。現在治療を受けてますが、肝がんは再発が多いと聞き、不安を抱えています。免疫細胞療法が再発を予防できる可能性があると聞いて、ぜひ受けてみたいと思っております。これは、どのような人が対象なのでしょうか。またその効果などについても教えてください。
(埼玉県 女性 61歳)
A 早期からの標準治療との併用で効果が得られやすい
肝がんは再発が多いがんです。
肝細胞がんは、肝硬変から発がんする方が多く、肝硬変からの発がん率は年間約7~8%と言われています。手術またはラジオ波焼灼療法で初発治療を行っても、次の1年間で約30%もの方に再びがんが発生しています。したがって初発治療から3年後には、だいたいの方に再発がみられるという、肝がんは非常に再発の多いことが特徴です。
これをうまく抑えていこうというのが免疫細胞療法です。現在、初回治療と併用して免疫細胞療法を行うことで、再発率を半数の約15%に抑えられるという結果が得られています。
最初に注意していただきたいのは、免疫療法とは、がんを単独でやっつける治療法としては向かないこと、また手術や放射線治療、化学療法などをすべて行った後に再発した、進行したがんに対する最後の砦としての治療法でもないということです。
あくまでも免疫療法は、標準治療の補完的な治療法として、効果が得られています。
たとえば手術やラジオ波焼灼療法、化学療法などの治療によって大きながん細胞をミサイル射撃のように一気にやっつけた後に、残ったがん細胞や新たにがんが出てくる再発がんをやっつけていくのが、免疫療法の役割だといえるでしょう。
その観点からすると、手術、ラジオ波焼灼療法、化学療法などの肝がんの治療と併用して免疫細胞療法を受けることができる方が効果を得られやすく、適応であるといえます。
手術と併用する場合、手術で摘出したがん細胞を使う樹状細胞ワクチン療法があります。
樹状細胞とは、司令官のような働きをする免疫細胞です。樹状細胞は、がん細胞を食べてその抗原(目印)を覚えて、兵隊のリンパ球に伝え(抗原提示)、リンパ球が抗原を覚えてがんをやっつけに行くのです。樹状細胞ワクチン療法は、血液から取り出した樹状細胞にがん細胞やその代わりとなるペプチドを食べさせてその抗原を覚えさせ、再び体内に戻す方法です。手術と併用して行う場合、取り出してきたがん細胞を使うことができるので、よいタイミングであるといえます。
手術を受ける際、免疫細胞療法を受けるかどうか迷われている場合には、「がんバンク」という、手術で摘出したがん細胞を冷凍保管してくれる施設もありますので、免疫細胞療法を受けたいと思ったときに解凍してワクチンを作ることもできます。 免疫細胞療法はラジオ波焼灼療法との併用も有効であるとされています。ラジオ波でがん細胞を殺すときの温度はだいたい100℃くらいです。
たとえばそれが200~300℃であれば、がんの抗原となるタンパク質が変性してしまいますが、100℃ほどであればがんは死んでいてもタンパク質は保存されます。壊されることなく体内に残った抗原を樹状細胞が食べて覚え、リンパ球に伝えるのです。
樹状細胞は、生きているがん細胞ではなかなか食べることができないので、死骸となったがん細胞が体内に残っていることは樹状細胞にとって抗原を覚えるよいチャンスなのです。