肺内転移の治療は?
1年前の肺腺がんの手術後、肺内転移が1つ見つかり、化学療法を受けました。ただ、抗がん薬はほとんど効いていないようで、現在は4㎝です。肺以外への転移はありません。放射線治療や手術は可能でしょうか。
(62歳 男性 神奈川県)
A 組織検査を行ったうえで治療薬の検討を
この方の病状について、手術時の病期、EGFR遺伝子変異や*ALK遺伝子転座の情報や化学療法の内容などが明らかでないので、可能な範囲で回答いたします。まず、肺内に新たに1つ程度のがんができた場合、それが肺内転移なのか、肺に新たな原発肺がんができたのか、どちらかによって治療法が異なります。前者では抗がん薬による全身治療が、後者では手術など局所療法が治療の中心です。そのため、原則的には組織や細胞診断で確認する必要があります。
組織診断には、気管支鏡や針生検、そして外科手術という方法があります。腫瘍の大きさや場所によっては、気管支鏡や針生検による診断は不確実です。また、手術は空気塞栓による意識障害などのリスクがあります。確かに、手術は呼吸機能などある一定の条件を満たす必要がありますが、診断は確実です。
検査や手術などで採取した細胞、組織をもとに、EGFRやALKの遺伝子検査を含めた病理検査を行った結果、組織型やその「性格」が最初のがんと同じと判断された場合は、肺内転移としてその「性格」にあった抗がん薬治療をします。ただ、この方の場合は、すでに行った抗がん薬治療が効いていないとのことです。3、4カ月以上の抗がん薬治療にかかわらず、がんが大きくなって薬の効果がみられない場合は、別の抗がん薬に変えたほうがよいでしょう。
一方、検査によって組織型や同じ組織型でも「性格」が以前のがんと異なることが明らかになった場合は、肺内転移ではなく新たな原発肺がんとして、I~Ⅱ期であれば手術や放射線治療を行います。
病巣部をピンポイントに狙った放射線治療である定位放射線治療は、肺がんの組織型にかかわらず効果が期待できます。ただし、3㎝以下のI期肺がんでこの治療を受けた人の20%程度に、3年以内に手術で取りきる範囲の再発が認められたという報告があります。4㎝の腫瘍ならば放射線治療後の局所再発を考慮して、手術が受けられる人には手術をお勧めします。
*ALK=未分化リンパ腫キナーゼ融合遺伝子(※細胞増殖をつかさどる酵素の一種)