EGFR遺伝子変異あり。分子標的薬から治療するのが良いか

回答者・久保田 馨
日本医科大学付属病院がん診療センター長
発行:2015年2月
更新:2015年12月

  

69歳の母が4年前に肺腺がんの手術をし、先月再発。胸膜播種で腫瘍がいくつかあり、胸水があると言われました。今になって思えば術後に化学療法をしたほうが良かったのではと思います。EGFR遺伝子変異があり分子標的薬が使えると言われました。抗がん薬治療よりもそちらのほうがいいですか? EGFR遺伝子変異があるということは、EML4-ALK融合遺伝子はないのでしょうか? また免疫細胞療法との併用はどう思われますか?

(40歳 女性 北海道)

一般的には分子標的薬から始めるのが良い

日本医科大学付属病院がん診療
センター長の久保田 馨さん

再発と言われると、「術後に化学療法をしておけば良かった」と思うのは当然でしょうね。しかし、術後補助化学療法は全ての再発を防ぐ程、効果が高いわけではありません。現時点での最善を考えていきましょう。EGFR遺伝子変異がある場合は、(殺細胞性)抗がん薬よりも分子標的薬を先に使って治療するのが一般的です。ただし、肺の線維化がある場合などでは、分子標的薬よりも、パラプラチン+タキソール、パラプラチン+アブラキサンといった、(殺細胞性)抗がん薬治療のほうが良く、最終的にどちらを先に使うかは、実際の肺の状況などを見て判断します。

遺伝子変異についてですが、ごくまれにEGFR遺伝子変異とALK融合遺伝子を両方持つ患者さんもいますが、EGFR遺伝子変異があれば、ALK融合遺伝子がないことがほとんどです。現在、胸膜播種と胸水があるということですが、もし胸水のコントロールがうまくできない場合には、血管新生阻害作用をもつアバスチン(分子標的薬)を治療薬に上乗せして使うことを考えても良いかもしれません。

また、ご質問にある免疫細胞療法との併用ですが、効果の証明は無く、行うべきではありません。有効性が期待されている免疫療法は、現在多くの施設で治験が行われています。数年後には一般診療でも使用できるようになるかもしれません。

なお、EGFR遺伝子変異陽性の場合、現在分子標的薬として、イレッサ、タルセバ、ジオトリフの3薬があります。治療薬選択の際には、遺伝子変異の部位も考慮します。副作用では、タルセバは皮疹が強く、ジオトリフは下痢の頻度が高いという特徴があります。副作用をよく知って、その対策を継続することが大切です。

パラプラチン=一般名カルボプラチン タキソール=一般名パクリタキセル アブラキサン=一般名ナブパクリタキセル アバスチン=一般名ベバシズマブ イレッサ=一般名ゲフィチニブ タルセバ=一般名エルロチニブ ジオトリフ=一般名アファチニブ

同じカテゴリーの最新記事

  • 会員ログイン
  • 新規会員登録

全記事サーチ   

キーワード
記事カテゴリー
  

注目の記事一覧

がんサポート3月 掲載記事更新!