高齢の母は抗がん薬治療に耐えられるか

回答者●久保田 馨
日本医科大学呼吸ケアクリニック臨床腫瘍部門長/副所長
(2023年12月)

77歳の母のことでご相談です。2021年11月に肺腺がんステージⅣで、肝臓と骨転移がありタグリッソを服用し、肺と転移の箇所は縮小しました。しかし、今年(2023年)9月に左頸部、縦隔、および腹部リンパ節転移、左副腎転移が見つかりました。最近は肋骨辺りの背中が少し痛むと言っています。

今後の治療として、①緩和ケア②点滴または服用抗がん薬③タグリッソ服用継続のいずれかを選択することになりました。緩和ケアの場合は余命が短くなったり、転移して苦しい思いをしないでしょうか。また抗がん薬治療の場合、どのような薬剤が考えらえるのでしょうか。ABCP療法があるようですが、4種類の抗がん薬の副作用に耐えられるのでしょうか。定位放射線療法は転移箇所が広範囲のため難しいのでしょうか。

(48歳 女性 神奈川県)

体力や治療意欲を含めて新たな治療法の検討を

日本医科大学呼吸ケアクリニック
臨床腫瘍部門長/副所長の久保田さん

患者さんはEGFR変異陽性肺がんで、タグリッソ(一般名オシメルチニブ)で治療中に新たに転移が出現し、今後の治療についてのご相談ですね。自覚症状も出ているとのことですから、新しい治療を検討する時期だと思います。

EGFR陽性肺がんは免疫チェックポイント阻害薬の効果があまり高くないため、多くの臨床試験で除外されていたのですが、ABCP療法をBCP療法と比較した臨床試験にはEGFR陽性患者も参加して行われました。

ABCP療法はBCP療法に比較して効果が高かったのですが、EGFR陽性患者だけをみてもABCP療法のグループが良好な成績でした。75歳から84歳までの高齢患者さんでもABCP療法のほうが良好な傾向でした。また、肝臓への転移がある方はABCP療法の効果がかなり高いことが報告されています。

ご本人の体力や臓器の働き具合、治療への意欲を含めて治療法を検討することになります。ABCP療法に含まれているアバスチン(一般名ベバシズマブ)は出血など血管への副作用があるので、動脈硬化が強い場合などはリスクが高くなります。

緩和ケアは、どのような治療を行う場合でも必要なことです。また、骨転移に対しては口腔ケアを行いながら、ランマーク(一般名デノスマブ)かゾレドロン酸(一般名)などの骨修飾薬を用いてください。

定位放射線治療で全ての病巣を治療することは難しいのですが、免疫チェックポイント阻害薬を用いた治療の前に、1箇所の病巣に放射線治療を行うと、治療部位以外の効果も高まることが報告されています。肋骨辺りの背中の痛みが、がんによるものであれば、その部位だけに放射線治療を行って、その後ABCP療法を受けることも考えられます。

ABCP療法=アデゾリズマブ(商品名テセントリク)+ベバシズマブ(同アバスチン)+カルボプラチン(同パラプラチン)+パクリタキセル(一般名)

BCP療法=ベバシズマブ(商品名アバスチン)+カルボプラチン(同パラプラチン)+パクリタキセル(一般名)