卵巣境界悪性腫瘍。再発の可能性は高いか?
1月に卵巣腫瘍が見つかり、すでに破裂していたため、緊急手術で左の卵巣と腫瘍を摘出。病理検査の結果、卵巣境界悪性腫瘍と診断されました。破裂したことで、子宮や右卵巣などにもがん細胞が飛び散っており、再手術を行い、疑わしいところを切除しました。
その後、主治医からは化学療法を行うという説明があり、現在TC療法を行っているところです。ただ、5年生存率が50%と聞き、不安でたまりません。色々調べてみると、卵巣境界悪性腫瘍は、悪性度の低いがんという記載もあるのですが、再発する可能性は高いのでしょうか。
(53歳 女性 滋賀県)
A 目で見える腫瘍を全て切除しており、再発リスクは必ずしも高くない
産婦人科学講座生殖腫瘍学
准教授の織田克利さん
破裂していて再手術が必要だったということですので、腫瘍細胞が卵巣以外にも散らばっていたと思われます。このご相談文だけでは確定的なことは申し上げられませんが、病期がⅠ(I)期(腫瘍が卵巣だけに限局している)より進んでいて、反対側の卵巣、子宮の表面、腹腔内など、最初に取り切れていなかった部分にも腫瘍の塊があった可能性が考えられます。
予後に関してですが、もし仮にⅠ(I)期だとすれば、「5年生存率が5割」ということはありません。*タキソールと*パラプラチンのTC療法を行っているということですが、Ⅰ(I)期であれば、治療法として抗がん薬治療を行わずに経過を見るケースが多く、予後は一般的に良好です。卵巣境界悪性腫瘍は、がんよりも発育がゆっくりなことが多いです。Ⅰ(I)期に関して言えば、再発リスクはそう高くはありません。
他の部位に腫瘍が形成されたⅡ(II)期以上の場合、抗がん薬治療が積極的に考慮されますが、抗がん薬が効きにくい場合もあり、再発のリスクがⅠ(I)期よりも高まることになります。ただし、ご相談者のように、子宮・両卵巣を含めて、目で見える腫瘍を全て取り切れている場合、再発なく経過される方は多く、仮に再発した場合にも腫瘍の発育がゆっくりで、腫瘍の追加切除が有効な場合もあります。その結果、卵巣がんよりも良好な予後が得られています。
まず2回目の手術の所見で腫瘍が残っていたのかどうか、最終的な病期はどうだったのかをお聞きになられると良いでしょう。腫瘍が全て取り切れていて、抗がん薬もされているのであれば、最善を尽くして治療を受けられていることになります。病気を正しく理解することで、不安が和らぐ場合も少なくありません。生存率などがわかりにくければ、再発リスクを含めて、他の医師からセカンドオピニオンを聞いてみることも、選択肢としてあります。
*タキソール=一般名パクリタキセル *パラプラチン=一般名カルボプラチン