抗がん剤の副作用か精神的な問題か
61歳の母のことでご相談します。8月に腹水が溜まったことがわかり、食事も水もとれなくなって緊急入院したところ、卵巣にがんが見つかりました。卵巣と大網を切除する手術を受けましたが、腹膜にもがんが飛び散っていて、レントゲンの画像では肝臓に影があるので、4期になっているかもしれないと、医師に言われました。その後、抗がん剤治療を始め、1週目に2種類、2~3週目に1種類の抗がん剤を点滴して1クール、これを6クール行うと医師に言われました。1クールはなんとか受けたのですが、2クール目で白血球が下がりすぎたため、抗がん剤点滴をお休みし、白血球を上げる注射を4回打ちました。その後、血圧が不安定になるなどしたため、入院しました。しかし、血液検査の結果はとくに異常はなく、現在は血圧も安定しているということで、精神的な問題を指摘され、精神科の受診を勧められています。母は今、音にかなり敏感で、人の話し声も自分の話し声も頭に響くような状態です。また、1日中でも寝られるらしく、起き上がると頭がふらつくようです。しかし、食事とトイレは自力でするように看護師から言われ、かなりのストレスがかかっている状態です。抗がん剤治療は今、ストップしています。注射による副作用ではないかと思っていますが、何の注射を打ったのか教えてもらえず、本人は精神科に行かされること自体がストレスになっているようです。どのように対処すればよいでしょうか。
(山口県 女性 46歳)
A まずは精神科か神経科の受診を勧める
このようなケースでは、できれば3~4週間に1度ずつ抗がん剤治療を行うことが望ましいのですが、残念ながら、治療は中断しているようです。この方の場合は、抗がん剤の副作用によって末梢神経障害が起きて、そのために今の症状が出ているのか、それとも、精神・神経科的な問題なのか、きちんとした診断をつける必要があると思います。
ご本人とご相談者は、もしかしたら精神科を受診することにためらいがあるのかもしれませんが、がんの患者さんが精神科や神経科(医療施設によって、標榜している科は異なります)を受診することは決して珍しいことではありません。がんの主治医と精神科ないしは神経科の医師が連携して、診療を進めることで、治療がより良い方向へ行くこともあるので、まずはそうした診療科を受診してみてはいかがでしょうか。同じ施設内に精神科や神経科があるのなら、よりスムーズに診療が進むでしょうから、そこにかかるとよいでしょう。
もしも末梢神経障害が起きている場合は、神経内科にかかるとよいと思います。ただし、抗がん剤の副作用で末梢神経障害が起こる場合、音に対しては通常、この方とは反対に、聞こえにくくなることが多いものです。ちなみに、神経科と神経内科は違う診療科で、神経内科では、脳卒中の後遺症やパーキンソン病など、純粋な神経の病気を診療します。
また、どんな注射を打ったのかわからないようですが、一般的には、抗がん剤のタキソール(一般名パクリタキセル)とパラプラチン(一般名カルボプラチン)の2剤と考えられます。主治医にきちんと確認されるとよいでしょう。