全身状態(PS)が良いのに無治療なのが不安

回答者・古賀文隆
都立駒込病院腎泌尿器外科部長
発行:2015年9月
更新:2015年12月

  

77歳になる父のことで相談します。父が早期の前立腺がんと診断され、「症状が出たら対策をとることにして、しばらく様子を見ましょう」と言われました。父は糖尿病や心疾患などもなく、歩行や判断力もしっかりしています。何の治療もしないことに不安になっているようです。私が調べたところ、小線源療法であれば高齢の父が受けてもよいように思うのですが……。

(43歳 女性 神奈川県)

PSA監視療法は適切。悪化傾向があれば有効な治療法がある

都立駒込病院腎泌尿器外科部長の
古賀文隆さん

治療方針で大切なのは、患者さんの体に出来るだけ負担を掛けないでがんを治すということです。今回の相談ケースでは、患者さんの77歳という年齢も加味して治療方法が選択されます。

日本人の77歳男性の期待(平均)余命は約10年です。それを全うできるように、10年以内に前立腺がんで命を奪われることなく、かつ最も体に負担のない治療を選択します。

前立腺がんは早期であれば、たとえ高リスクであっても適切な診療を受けていれば10年以内にがんが原因で亡くなるリスクは極めて低いといえます。現時点で、自覚症状がないのであれば、PSA(前立腺特異抗原)監視療法も適切と考えます。3カ月に1度程度のPSAチェック、年1回のMRI(磁気共鳴画像)検査を受けていただき、いずれかで悪化傾向があれば、生検を含む精査を経て、治療ということになります。

悪化傾向が出たときの治療法はリスク分類に応じて選択されます。低リスクであれば放射線単独(小線源療法またはIMRT=強度変調放射線治療)、中リスクであれば短期ホルモン療法+IMRT、高リスクであれば2~3年間のホルモン療法+IMRTが標準治療となっています。ホルモン療法は血糖値やコレステロール、中性脂肪の増加や認知機能に悪影響を及ぼす可能性があるため、高齢者ではホルモン療法の期間を短くするなど配慮することがあります。

医師は様々な要素を勘案しながら治療を選択しています。もし不安があったときは、なぜその治療法を選択したのか、納得のいくまで医師に聞いてみられることをお勧めします。

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