前立腺がんの放射線治療 HDRとIMRT、どちらがよいか

回答者:島田 誠
昭和大学横浜市北部病院 泌尿器科教授
発行:2010年10月
更新:2013年12月

  

2010年の1月に受けたPSAの検査の結果、値は6.2ナノグラム/ミリリットルあり、さらに生検を受けると、前立腺がんが見つかりました。がんは前立腺の片側にある限局性で、転移はありません。T2aといわれました。ただし、グリソンスコアは10で、高リスクです。現在、ホルモン治療を始めて半年がたちます。4週ごとにリュープリン(一般名リュープロレリン)の注射を打ってもらい、カソデックス(一般名ビカルタミド)を毎日1錠、服用しています。PSA値は現在0.06ナノグラム/ミリリットルです。放射線治療を受けるにあたり、HDR(高線量率小線源治療)にするか、外照射のIMRT(強度変調放射線治療)にするか、迷っています。通院で受けられるIMRTのほうがよいかと思っていますが、決めかねています。ただし、今、治療を受けている病院にはHDRもIMRTもありません。 既往症もなく、元気です。選択するにあたり、アドバイスをお願いします。

(東京都 男性 78歳)

A がんの位置、限局により、IMRTがより良い

HDRとIMRTの治療成績を比較したデータはまだないため、どちらがより良い治療法であるかは、現時点ではわかりません。ただご質問の文面からすると、この方にはIMRTのほうがより適しているのではないかと思います。

HDRは、前立腺にイリジウム線源を通す針を刺して、がんの病巣に放射線を照射する放射線治療です。照射する範囲は前立腺全体であることが多いです。

一方のIMRTは、放射線を当てる照射図をコンピュータを使って描き、強さの違う高線量の放射線を多方向から照射する放射線治療です。そのため、HDRよりIMRTのほうが病巣により集中的に放射線を当てることができます。

ご相談者の前立腺がんは、がんの位置が特定されていて、しかも限局しています。これが、IMRTのほうがより適しているのではないかと考える根拠です。

合併症は、従来の放射線治療に比べると、どちらもかなり少ないという特長があり、両者にそれほど大きな差はありません。

ただ、IMRTは前立腺に針を刺さない分、局所的な合併症は非常に少ないです。

最も大きな合併症は排尿に関する障害で、これはHDRもIMRTも同程度起こりえます。具体的には、排尿困難や頻尿、排尿時や排尿後の不快感などが起こることがあります。

入院の有無など、治療状況はそれぞれ異なります。HDRは短期間の入院が必要ですが、IMRTは通院で治療を受けられます。

また、HDRは前立腺の大きさが80ミリリットル以上の人には原則として行うことができません。前立腺が大きすぎると、前立腺に針を差し込めないためです。

繰り返せば、文面だけから判断すると、ご相談者にはIMRTのほうがより適しているように思いますが、HDRでも大きな差はないでしょう。IMRT、あるいはHDRをご希望でしたら、主治医に紹介状を書いてもらい、それらの治療を行っている医療施設を受診されるとよいでしょう。

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