期待の新薬の治験を受けたい

回答者:赤倉 功一郎
東京厚生年金病院 泌尿器科部長
発行:2010年4月
更新:2013年12月

  

10年前、65歳のとき、PSA(前立腺特異抗原)値139で、前立腺がんとわかりました。ホルモン療法でPSA値を下げてから、全摘手術を受けました。リンパ節転移があり、リンパ節郭清を行いました。リニアック(放射線治療)で63グレイ(人体に吸収された放射線量を表す単位)照射後に、ゾラデックス(一般名酢酸ゴセレリン)の注射を月1回、カソデックス(一般名ビカルタミド)を毎日1錠服用するホルモン療法を始めました。その後、ゾラデックスを3カ月に1回注射していました。精巣除去をすれば注射は不要になるとのことで、3年前にその手術をしました。1昨年の後半頃からPSA値が上昇し始めて、飲み薬をカソデックスからオダイン(一般名フルタミド)に替えました。2009年のPSA値は、0.355~0.257を前後し、12月の数値は0.348でした。3回連続の上昇はありません。この12月の診察時、「タキソテール(一般名ドセタキセル)使用の用意がある」と告げられました。最近、アビラテロンという新しい薬が開発中であることを知りました。延命効果が期待できるのなら、早い時期から治療に使用してほしいと切望しています。治験(医薬品の臨床試験)を受けたいと思います。治験を行っている施設を教えてください。

(青森県 男性 74歳)

A 治験は未定。が、治療は焦る必要はない

アビラテロンという新しいホルモン治療剤は、アメリカではジョンソン・エンド・ジョンソン社がライセンスを得ています。日本での治験のプロトコール(治験実施計画書)は、決まっていないと思います。治験を行う施設なども、まだ公表されていません。

前立腺がん増殖の原因の1つは、精巣と副腎から分泌されるアンドロゲン(男性ホルモン)とその受容体が結合することです。

ご相談者は、精巣摘除手術を受けられているため、精巣からのアンドロゲンの分泌はないと考えられます。

副腎から出るアンドロゲンを阻止できればさらによいわけですが、これまで使用されたカソデックスやオダインにも、前立腺で、副腎からのアンドロゲンをブロックする作用があります。ですから、現在、まったくの無策というわけではありません。

アビラテロンという薬剤は、副腎においてアンドロゲンを合成する代謝酵素の働きを阻害します。ですから、アビラテロンの使用は、よい案かもしれません。ただ、現時点で使用できない薬を考えてみても意味がありません。

ご相談者のPSA値は、昨年12月0.348で、それほど高い数値ではなく、2009年のPSA値の変動幅である0.355~0.257の範囲内です。

連続3回の上昇という再燃の定義にも該当しないようですから、次の治療選択について、あまり焦らなくてもよいかと思います。あわてる必要は、まったくありません。

もしも何もしなくても、痛みなどの症状が出てくるのは、かなり先のことです。

次の治療は、標準的にはタキソテールですが、まだ早いように思います。もう少し様子を見てから始められたほうがよいでしょう。

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