手術と放射線療法、どちらが得か

回答者:赤倉 功一郎
東京厚生年金病院 泌尿器科部長
発行:2011年7月
更新:2013年11月

  

父が早期の前立腺がんと診断されました。主治医からは手術と放射線療法の両方を選択できると言われています。ただ、放射線療法では、再発した場合の治療法が限定されるという話を聞いたことがあります。もし仮にいずれ再発した場合、初回にどういった治療を受けていたかによるメリット、デメリットはありますか。

(福岡県 女性 42歳)

A 初回の治療が手術なら、放射線療法もホルモン療法も可能

前立腺がんの再発とは、PSA(前立腺特異抗原)検査で値が上昇するPSA再発であることがほとんどです。ただし、PSA値が上がってきても、画像診断や触診では再発病巣がどこにあるかわからないことが多いのです。

考えられる可能性は、前立腺の局所再発と転移による再発の2つです。どちらであるかによって、治療法は違います。局所再発の場合は手術または放射線療法(HIFUを含む)、転移の場合はホルモン療法が適用になります。

PSA値は早期の段階で上がってくるので、局所再発か転移のどちらであるかを見分けることは非常に難しく、推測するしかありません。比較的早期にPSA値が急速に上がってきた場合は転移の可能性が高いです。一方、1次治療後、たとえば1年以上たってからPSA値がゆっくり上がってきた場合は局所再発の可能性が高いといえます。

手術後の局所再発に対する放射線療法は有効ですし、副作用もあまりないため、非常によく行われています。

しかし、放射線療法後の局所再発に対して手術を行うのは非常に難しく、日本ではあまり行われていません。手術により、尿失禁、勃起障害、直腸損傷などの合併症が起こりやすいからです。そもそも1次治療で放射線療法を行ったのは、患者さんが手術をしたくない、高齢である、手術によるリスクが高いなどの理由によります。そういった患者さんに2次治療で手術を行うことはまれです。

転移の場合は、1次治療で手術をしていても放射線療法をしていても、ホルモン治療を行います。

まとめますと、1次治療で手術をした場合、局所再発では放射線療法、転移ではホルモン療法が行えます。しかし、1次治療で放射線療法をした場合、局所再発でも転移でもホルモン療法が主な選択肢です。

1次治療での手術と放射線療法の治療成績は確かにほとんど変わりませんが、手術を選んでおけば、2の手、3の手がまだあると、気持ちに余裕が持てるのではないでしょうか。

HIFU=高密度焦点式超音波療法。強力な超音波を使って、前立腺を80~98度の高熱で熱することにより前立腺の中のがんを殺してしまう治療法

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