有棘細胞がん 手術を行うための補助療法は?

回答者・吉野公二
がん・感染症センター都立駒込病院皮膚腫瘍科医長
(2014年5月)

65歳の父の左顎に近い首の部分に、有棘(ゆうきょく)細胞がんができました。

本来は広い範囲の手術が必要だそうですが、その範囲が顔に走っている神経に及びそうで、取り切るのが難しいといわれています。その根治を目標とする手術を可能にする補助療法というものがあるそうですが、どんな療法ですか。

(33歳 女性 長野県)

術前化学放射線療法で手術の可能性も

がん・感染症センター都立駒込病院皮膚腫瘍科医長の吉野公二さん

有棘細胞がんはリンパ液の流れに乗って転移をしやすいがんで、根治を目的とした手術では、原発巣に所属するリンパ節の郭清も必須です。

ご相談者の父君はリンパ節への転移の可能性がある、あるいは耳下腺や重要な神経の間近にがんが浸潤しているなど、何らかの理由で根治を狙った十分な切除ができない状態だと察せられます。

メラノーマで承認されているセンチネルリンパ節生検を行って、陰性であればリンパ節郭清を省略できる道があればよいのですが、有棘細胞がんではその有用性はまだ認められておらず、それを明らかにすることが課題となっています。

お尋ねの手術の補助療法ですが、有棘細胞がんにおいては術後に行う放射線治療が知られています。

手術で取りきれなかったがんを想定した治療法で、手術の効果を補い再発防止を目的としています。

近年は手術の前にこれを実施する方法が開発され、効果が確認されています。放射線の効果を高める抗がん薬と併せる化学放射線療法を一緒に行う方法もあります。

腫瘍の部位や大きさ、深さなどの観点から手術で腫瘍をすべて取りきることが難しい場合には、手術に先立って化学療法と放射線治療を同時に実施することで腫瘍を縮小させる方法もあります。

こういった治療により根治的な手術が可能になることもありますので、一度主治医にこれが可能かお尋ねになってはいかがでしょうか。