切除不能進行・再発胃がんに対する療法について

回答者・山口俊晴
がん研有明病院副院長・消化器センター部長
発行:2014年2月
更新:2019年7月

  

肺に転移した胃がん(Ⅳ期)の父(76歳)についての相談です。担当医からは、手術は難しいためTS-1とシスプラチンによる化学療法をと言われました。インターネットで調べたところ、同療法には「高齢者には注意が必要」とあり、シスプラチンの代わりにエルプラットも有効だとありましたが、父には使えるのでしょうか?

(41歳 男性 埼玉県)

シスプラチン投与前の腎機能評価が重要

がん研有明病院副院長・消化器センター部長の山口俊晴さん

切除不能進行・再発胃がんに対する治療法は、TS-1+シスプラチン(SP療法)が最も奏効率が高いためファーストラインとされています。ただ、シスプラチンには腎不全など腎機能に悪影響を及ぼす副作用があることが特徴です。そのため、シスプラチン投与には点滴によって水分を負荷した上で、利尿薬を使用して尿の量を多くし腎毒性を軽減する対策が必要となります。

一般的に、腎機能は加齢とともに低下します。そのため、シスプラチン投与前に腎機能を評価することが大切になります。腎機能が悪い場合は、TS-1単剤またはタキソールやタキソテールによる治療もあります。ただし、TS-1にも腎機能障害などの副作用があるため、定期的な血液検査が必要となります。また、あまりに腎機能が悪い場合は、UFTによる治療という選択肢もあります。

質問者のご指摘通り、SP療法は高齢者には注意が必要となります。しかし、年齢だけで投与するかどうかは決められません。暦年齢と実際の体力や体調は異なります。注意事項であるシスプラチンによる腎機能への影響がないようであれば、SP療法をお勧めします。この場合、投与前の腎機能評価が重要となります。

また、エルプラットは日本を含め世界中で、同じ消化器系がんである切除不能進行・再発大腸がんの標準治療薬として使われています。海外ではすでに、切除不能進行・再発胃がん患者さんに対して、TS-1+エルプラット(SOX療法)が併用療法の1つとして用いられています。

SP療法と比較して、無増悪生存期間(PFS)もほぼ同じであることが報告されています(ASCO-GI2013)。エルプラットの治療効果については、国内でも臨床試験中ですが、現在のところ未承認薬です。

エルプラットは、3~4時間ほどの点滴投与ですむため、入院の必要がなく、外来で治療ができます。また、シスプラチンのように投与に補液の必要がなく、消化器毒性も比較的少ないのですが、末梢神経障害による副作用の発現が特徴です。それでも、切除不能進行・再発胃がんに対する治療の選択肢の1つとして、早期の承認が期待されています。

シスプラチン=商品名ブリプラチン/ランダ エルプラット=一般名オキサリプラチン 奏効率=治療実施後にがんが縮小・消滅する患者さんの割合 タキソール=一般名パクリタキセル タキソテール=一般名ドセタキセル UFT=一般名テガフール・ウラシル 無増悪生存期間(Progression-Free Survival)=治療中および治療後にがんの悪化がなく生存する期間の長さのこと

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