抗がん剤治療は術後と術前、どちらがよいか

回答者:山口 俊晴
がん研有明病院 副院長・消化器外科部長
発行:2009年6月
更新:2019年7月

  

スキルス胃がんの病期3期と診断されました。がんは胃の外側には出ていなかったのですが、リンパ節には転移がある状態だと言われています。主治医からは、手術と抗がん剤治療を行うと説明されていますが、抗がん剤を術前と術後のどちらに行うか検討中であると言われています。抗がん剤は術前と術後、どちらに行うのが望ましいのでしょうか。それぞれのメリットとデメリットを教えてください。

(千葉県 男性 47歳)

A 標準治療は術後だが、術前にもメリットがある

抗がん剤治療は現在、術後に行うのが標準治療です。ただし、抗がん剤治療を術前と術後、どちらに行うとより治療効果が高いかは、今も検討が続いています。

術後に行う場合の抗がん剤は、内服薬のTS-1(一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)が一般的です。

一方、術前に行う場合は、TS-1とブリプラチンまたはランダ(一般名シスプラチン)の2剤を使う方法が一般的です。ブリプラチン(またはランダ)は点滴静脈注射によって投与します。

術前と術後、それぞれの抗がん剤治療には、それぞれメリットとデメリットがあります。

術前の抗がん剤治療のメリットは、治療後にCT(コンピュータ断層撮影)や内視鏡検査をしたり、手術で切除した標本を調べることで、抗がん剤治療の効果がわかる点です。また、がんが縮小したら、その後に行う手術がやりやすくなります。たとえば、リンパ節転移がたくさんあるような場合、抗がん剤治療でその転移巣が小さくなると、手術はかなりやりやすくなります。

デメリットは、抗がん剤治療の効果がなかった場合、その分、時間を空費したことになり、結果的に、治療が遅れてしまいます。TS-1は通常、2カ月ほど服用するため、効果が出なかった場合は、その間の治療が遅れてしまうことになります。また、抗がん剤治療によって体力を消耗し、場合によっては、手術に耐えられなくなることもあります。

一方、術後の抗がん剤治療のメリットは、術前に抗がん剤を使わないため、抗がん剤の手術に対する悪影響がないことが挙げられます。

デメリットは、抗がん剤の経口摂取(薬を飲むこと)が、術後は思うようにできなくなる場合もあることです。

以上のように、術前と術後の抗がん剤治療には、それぞれ一長一短がありますが、現在は、術後にTS-1などの抗がん剤治療を行うのが標準治療です。そのため、一般的には抗がん剤治療は術後に行うことを勧めますが、がんがかなり進行していて、手術がやりにくい場合などは、先に抗がん剤治療をする方法を検討してもよいと思います。

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