非セミノーマ精巣腫瘍。経過観察が不安

回答者・岸田 健
神奈川県立がんセンター泌尿器科部長
(2014年10月)

精巣の摘除を受けた後、非セミノーマの精巣腫瘍と診断されました。経過観察となったのですが、このままでいいのか心配です。経過観察の是非と、もし再発した場合はどのような治療になるのか教えて下さい。

(30歳 男性 東京都)

再発してからの治療でも完治見込める

神奈川県立がんセンター泌尿器科部長の岸田 健さん

精巣腫瘍は、組織型によりセミノーマ(精上皮腫)と非セミノーマ(非精上皮腫)に分けられます。それぞれに特徴があり、セミノーマは予後がよく、初期の転移には放射線治療も選択されます。非セミノーマは、セミノーマに比べて予後が悪く、転移しても放射線治療はせずに抗がん薬治療のみが取られます。

質問者は、経過観察ということですから、ステージⅠだったと思われます。ステージⅠはがんが精巣に限局している時期で、摘除術により70~80%が完治します。この率はセミノーマでもほぼ同様です。

逆にいうと、20~30%が再発するということでもあるのですが、再発した場合には抗がん薬治療を行います。BEP療法といって、ブレオマイシン、エトポシド、シスプラチンを投与します。1コース3週間で3~4コース行います。これにより90%以上の方は完治しますので経過観察のまま完治した方々と合わせるとほとんどの方が完治することになります。

もう1つの治療方針として、経過観察をせずに、再発予防の意味で精巣摘除後に転移が見つからなくても抗がん薬治療をするということもあります。この場合はBEP療法を2コース行います。再発率はかなり低くなり、やはりほとんどの方が完治します。つまり、どちらを選んでも完治の可能性に大きい差はありません。経過観察の良いところは無治療でも再発しない約70%の人は余計な治療をしなくて済むということです。一方、再発前に抗がん薬治療するメリットは、再発率が経過観察の10分の1ほどになるので安心感が得られる、ということです。しかし、本来なら必要のない治療を受けることにもなりかねません。

摘出した精巣のがんの血管への浸潤などを評価して、再発率の高そうな患者さんだけに予防投与を行う、という考えもあります。

近年の医療は、患者さんの負担をより小さくするために、やらないで済む治療は行わないという流れなので、経過観察をとることが多くなっています。しかし、注意しなければならないのは、厳重なチェックが必要ということ。最初の2年間に再発が起きることが多いので、CTや腫瘍マーカーによる検査を3カ月に1回、それ以降も半年か1年に1回の検査が必須です。

医師側は両方の治療方針を提示します。何もしない経過観察にご本人の不安があれば、抗がん薬治療を選んだほうがいいかもしれません。患者さんとの話し合いで決めていきます。

ブレオマイシン=商品名ブレオ エトポシド=商品名ラステット/ベプシド シスプラチン=商品名ブリプラチン/ランダ