転移したリンパ節は切除すべきか

回答者:岸田 健
神奈川県立がんセンター 泌尿器科医長
発行:2013年3月
更新:2013年11月

  

非セミノーマでリンパ節転移も認められ、病期ⅡAと診断されています。BEP療法×3クールで腫瘍マーカーは正常化したのに 、担当医からはリンパ節郭清を勧められました。残ったがんは2cmです。また、射精障害などが怖いため、手術はしたくありません。将来は子どもも作りたいと考えています。それでも切ったほうが良いのでしょうか?

(青森県 25歳 男性)

A 化学療法後の残存腫瘍は手術が基本

化学療法後に腫瘍マーカーの数値が正常化しても、がんが残っている場合が約10~20%あることがわかっています。

このため、非セミノーマでは抗がん薬治療後に腫瘍が残っていたらすべて摘出するとNCCNのガイドラインでは定められています。

精巣がんでは、お腹にある大血管周辺にあるリンパ節に転移することが多いため、その場合はリンパ節とその周辺組織を取り去る手術が行われます。これを後腹膜リンパ節郭清術といいますが、広範囲に切除すると射精に関わる神経を切断するため射精障害が起こるのです。

射精障害を回避するために郭清する範囲を狭めて、神経を温存するような手術も試みられていますが、それで十分かどうかはまだ厳密には分かっていません。

EAUのガイドラインでは、がんが1㎝以下の場合は切らずに経過観察と定めていますが、この患者さんのように2㎝のがんが残っている場合は、原則として手術をお勧めします。

また、射精障害が起きても勃起機能は残りますし、精子をつくる能力が保たれていれば精子を尿中から回収したり、精巣から採取して人工授精を行うという方法で妊娠は可能です。

非セミノーマ(非精上皮腫)=胚細胞から発生する精巣腫瘍でセミノーマ以外のものをまとめた総称。胎児性がん、奇形腫、絨毛がん、卵黄嚢がんなどが含まれる。

BEP療法=ブレオ(一般名ブレオマイシン)+ラステッド(またはベプシド、一般名エトポシド)+ランダ(またはブリプラチン、一般名シスプラチン)

NCCN=全米総合がん情報ネットワーク。世界の21のがんセンターのNPO団体で、ガイドライン策定組織がある

EAU=欧州泌尿器学会

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