進行乳頭がん。術後ホルモン療法は有効か

回答者:杉谷 巌
がん研有明病院 頭頸科副部長
(2012年1月)

甲状腺左葉に5センチ大の乳頭がんが見つかり、気管にも浸潤が見られたので、甲状腺全摘に周辺組織切除を伴う拡大手術を受けました。主治医は再発予防の治療法として、「TSH抑制療法」というホルモン療法もあると言います。私は、TSH抑制療法を受けたほうがいいですか。

(石川県 女性 53歳)

A ヨード治療→TSH抑制療法が一般的

甲状腺刺激ホルモン(TSH)は脳で産生され、甲状腺を刺激して甲状腺ホルモンの分泌を促しますが、甲状腺がんの増殖も促します。そこで、甲状腺刺激ホルモンの分泌を抑えて、甲状腺がんの増殖を食い止めるのがTSH抑制療法です。

具体的には甲状腺ホルモン剤を多めに服用して、甲状腺刺激ホルモンが分泌されにくくします。

ご相談者のようなケースは乳頭がんでもリスクが高く、がんの再発・転移が起こりやすいため、まず放射性ヨード治療を行い、ついでTSH抑制療法を行うのが一般的です。

私たちの研究では、術後にTSH抑制療法を行っても、行わなかった例よりも再発予防効果はあまり上がらないことがわかりました。とはいえ、いずれにしても甲状腺全摘後のホルモン剤の補充は必須なので、念のためにTSH抑制療法を追加してもいいでしょう。ただし、高齢の女性は、この治療によって骨粗鬆症や不整脈など心機能低下のリスクが高まるため、要注意です。治療期間は決まっていませんが、再発がなければ、ホルモン剤の服用量を減らしていくといいでしょう。