未分化がんの治療法は?

回答者:杉谷 巌
がん研有明病院 頭頸科副部長
(2012年10月)

70歳になる母についての相談です。先日、急に首にしこりができ、おかしいと思い検査をしたところ、甲状腺未分化がんとわかりました。未分化がんの場合、治療が難しいという話を聞きました。具体的にどのような治療が行われるのでしょうか。

(青森県 男性 36歳)

A 化学療法+手術に期待

未分化がんは増殖がとても早く、悪性度の高いがんです。他の甲状腺がんとは性質が異なるため、放射性ヨード治療やTS H抑制療法には効果が期待できません。また、患者さんの数自体も少ないため、臨床データを十分集めることができず、有効な治療法が確立されていないのが現状です。

それでも、増殖が比較的ゆっくりしていて、腫瘍が甲状腺にとどまっている場合などには、甲状腺の摘出手術を行い、その後、化学療法や放射線療法を組み合わせた治療が行われ、効果が見られる場合もあります。

化学療法では、エトポシドとシスプラチンを用いたEP療法やエトポシド、シスプラチン、アドリアシンの3剤によるEAP療法などの治療が行われてきました。

ただしこれらの治療は、白血球減少などの副作用が強く、高齢者が多い未分化がんの患者さんには負担の大きな治療法です。

最近では、甲状腺がんの治療に携わる医師らが連携を取り、「甲状腺未分化癌研究コンソーシアム」という団体を作り、経験した症例を持ち寄って検討を進めています。そのなかで、新たな標準治療をつくるため、1つの臨床試験が始まっています。

それは、比較的副作用の軽い、新しい抗がん剤であるタキソールという薬を週1回投与するという方法です。術前にタキソールを投与して、腫瘍を小さくしてから手術を行うことができた場合に、従来から行われていた治療より良い成績が出ることが期待されています。

また、未分化がんに対する新しい分子標的薬レンバチニブ(一般名)やコンブレタスタチン(一般名)による臨床試験も近々始まる予定です。残念ながら現状では、確立された治療があまりない未分化がんですが、今後に期待がかかります。

エトポシド=一般名ベプシド/ラステット シスプラチン=商品名ブリプラチン/ランダ アドリアシン=一般名塩酸ドキソルビシン タキソール=一般名パクリタキセル