1a期の子宮体がん。内服薬で治療し、出産するのは可能か

回答者:上坊 敏子
社会保険相模野病院 婦人科腫瘍センター長
発行:2009年10月
更新:2013年12月

  

30歳の主婦です。子宮体がんの1a期と診断されました。標準的な治療法は手術で、子宮、卵巣、骨盤内のリンパ節を切除するのが一般的であると、主治医に説明されました。場合によっては、傍大動脈リンパ節を腎臓の近くまで切除するとも言われました。私にはまだ子供がおらず、夫婦ともに子供を望んでいます。それで主治医に手術以外の治療法を相談したところ、ヒスロンH(一般名メドロキシ・プロゲステロン・アセテート=MPA)というプロゲステロン製剤を服用する方法もあると言われました。薬を飲むだけでがんが治り、子供を産むことができるのなら、ヒスロンHの治療を選びたいのですが、治る可能性はやはり手術のほうが高いのでしょうか。また、手術を受けないと、がんが再発する可能性が結構あると聞きましたが、どれくらい再発するのでしょうか。まずはヒスロンHを飲んで、経過をみて、よくならないときに手術を考えてみるのはどうでしょうか。がんを治したいのはもちろんですが、子供のことも諦めきれずにいます。アドバイスをお願いします。

(秋田県 女性 30歳)

A 標準治療は手術。条件をクリアするか確認したうえで再度検討を

1a期の子宮体がんの標準治療は手術です。リンパ節を切除するかどうかはともかく、子宮を摘出することが、がんを治すためには最も確実な方法です。ですから、原則としては手術をおすすめします。

ただし、どうしても妊娠・出産を希望される方は次の7つの条件が当てはまれば、検討されてみてよいと思います。

(1)年齢が40歳以下であること

(2)1a期の子宮体がんであること

(3)組織所見として、ホルモン療法が効く高分化型のがんであること

(4)心筋梗塞の既往や肝臓の病気など、ヒスロンHを使えないような合併症がないこと

(5)夫もヒスロンHの治療を希望していること(夫が反対である場合、治療がスムーズに進まないことがあるため)

(6)ヒスロンHによる治療のリスクをしっかり理解すること

(7)定期的な経過観察を受けること

1a期の子宮体がんでヒスロンHの治療を受けると、およそ70パーセントの方のがんは消失します。逆にいえば、30パーセントの方のがんは消えません。

また、がんが消失しても、40~50パーセントの方はがんが再発します。70パーセントの方の40~50パーセントは再発するのですから、計算をすると、ヒスロンHだけで治る人はせいぜい35パーセントほどになります。逆にいえば、65パーセントは治らない治療です。一方、1a期の子宮体がんは、手術をすると100パーセント近く治ります。このことはよくご理解ください。

ご相談者がお書きのように、まずはヒスロンHで治療をし、よくならないときに手術を行うという方法もあり、それでもがんを治すことは十分に可能です。また、ヒスロンHでいったんがんが消失し、その後、再発した後に手術をしても治る可能性は十分にあります。

ご相談者は30歳で、ご夫婦ともにお子さんを希望されていますから、ヒスロンHでの治療を受けるのもよいと思います。ただし、治療がうまくいかない場合は、ヒスロンHにこだわらずに、手術をお受けになるのがよいと思います。

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