子宮体がん1期との疑い。診断がはっきりしない状態での手術は不安

回答者:磯西 成治
東京慈恵会医科大学付属青戸病院 産婦人科診療医長
発行:2009年11月
更新:2013年12月

  

不正出血が気になり、近くの婦人科クリニックを受診しました。超音波検査を受けたところ、子宮内膜に異常が疑われ、細胞診の検査も受けました。紹介先の病院でも、組織診の検査や、CT(コンピュータ断層撮影)やMRI(核磁気共鳴画像法)などの精密検査も受けました。その結果、子宮体がん1期との疑いで手術を予定しています。「正確な診断は、手術を行ったあとでないとわからない」とも言われました。お聞きしたいのは3つです。1つは、手術前に、診断をはっきりさせることはできないのかということです。診断がはっきりしない状態で、手術を受けることに多少不安を感じています。もう1つは、手術方法についてです。手術をするなら、身体にできるだけ負担のかからない手術方法を選びたいと思います。どのような手術方法がよいでしょうか。3つ目は、手術後の治療についてです。手術後に、化学療法または放射線療法を追加することがあるとも聞いています。化学療法と放射線療法とでは、どちらのほうがよいのでしょうか。

(山梨県 女性 56歳)

A 組織診で1期の疑いと診断された場合、一般的に手術を行う

子宮体がんの診断は、組織診で判断します。相談者の組織診の結果がわかりませんが、手術を予定されているとのことですから、組織診で子宮体がんと診断されたのでしょう。

組織診で子宮体がんと診断されて、1期の疑いがある場合には、一般的には手術を行います。

手術方法は、基本的には腹式の子宮全摘出術で、卵巣・卵管とリンパ節の切除を行います。腹腔の細胞検査も行います。卵巣・卵管とリンパ節を切除するのは、転移の可能性があるためと、病期の診断を正確に行うためです。

手術後に、病理診断、病期(ステージ1~4)、分化度(グレード1~3)の診断を行います。これらの診断結果をもとに、リスク分類を行います。

再発リスクは、低リスク群と中リスク群、高リスク群の3つに分類します。低リスク群なら、手術後は経過観察が可能です。中リスク群以上では、手術後は主に化学療法を行います。

手術後の化学療法の第1選択は、ブリプラチン(またはランダ。一般名シスプラチン)とアドリアシン(一般名ドキソルビシン)の併用とされています。第2選択としては、パラプラチン(一般名カルボプラチン)とタキソール(一般名パクリタキセル)も選ばれています。手術後の診断で、病期が2期以上とか、分化度が中リスク群以上であることが判明した場合には、手術のみで終わることはなく、化学療法が必要になります。

相談者のように、1期が疑われた場合でも、前述した標準的な手術を行った結果、実際には2期以上と診断される場合もあります。また、1期のなかでも中リスク群に入ることがあります。

このように、手術後の診断は、術後の治療、管理を決定する重要な鍵を握っています。

相談者の場合、卵巣・卵管、リンパ節を残すような縮小手術では、不完全であり、正確な診断は不可能です。したがって、術後の方針も立てられません。

手術後に必要とされる化学療法と放射線療法については議論されておりますが、日本では、手術後は主に化学療法を行います。

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