子宮体がんの1a期。出産をあきらめきれない

回答者:宮城 悦子
横浜市立大学付属病院 化学療法センター長
発行:2008年10月
更新:2013年12月

  

妻(33歳)が子宮体がんになりました。ステージ(病期)は1a期だろうと言われていて、治療法は手術(子宮全摘+両側付属器切除)とホルモン療法の2つを提案されています。私たち夫婦には子供がいないため、2人とも、子供を欲していましたが、妻が病気になった今となっては、私は妻の体を第1に考えたいと思います。しかし妻は、子供をまだあきらめきれないようです。私は確実に治る可能性が高い治療法を望みます。それがもし手術で、子供をあきらめなければいけないのであれば、妻を説得するつもりです。より確実性の高い治療法はどちらでしょうか。また、治療の安全性はどちらがより高いでしょうか、教えてください。

(岐阜県 男性 35歳)

A 治療の確実性は、ホルモン療法より手術のほうが高い

1a期の子宮体がんに対する治癒の確実性が高い治療法は、子宮全部と卵巣と卵管の両側付属器を切除する手術です。

この術式であれば手術の安全性も高く、手術によって亡くなるようなことも、通常はありません。ですから、原則的には、手術をおすすめします。ただし、手術を受けると、お子さんは望めなくなります。

ホルモン療法というのは、高用量のプロゲステロン療法のことだと思います。この治療法を行い、治療効果が認められ、がんが治癒すれば、妊娠・出産をすることも可能です。

このホルモン療法(高用量のプロゲステロン療法)が子宮体がんに適応になる条件は、高分化型のがんの場合で、なおかつ、MRIや超音波検査(エコー検査)など、すべての臨床的な情報から判断して、がんは現状ではステージが0期か1a期だろうと推測できることです。さらに言えば、これらの条件を満たしたうえで、本人が子供をどうしても欲する場合に適応になります。

ご相談者の奥さんは、ホルモン療法も治療法の1つとして提案されているということですから、前記の条件をすべて満たしているのでしょう。

ホルモン療法では、高用量のプロゲステロンを3カ月ほど投与します。そして、その間に、子宮内膜全面掻爬術を行い、治療効果があがれば、再び高用量のプロゲステロンを3カ月ほど投与して、子宮内膜全面掻爬術をもう1度行うなどして、効果を慎重に評価します。それで、がんが治癒に至れば、一定期間をおいて避妊解除(妊娠を許可すること)します。場合によっては、不妊治療を行うこともあります。

このホルモン療法によって、子宮体がんの0期や1a期で出産されたケースは数多く報告されています。

しかし一方、ホルモン療法が功を奏せずに、がんが進行してしまったり、ホルモン療法が効かないために手術を行ったら、1a期よりも進んだがんであることが判明したりしたケースもあります。こうしたケースもあることをきちんと知ったうえで、判断されることが重要です。

また、ホルモン療法を行うと、血栓症や肝機能の低下などの副作用が起こることがあるため、ホルモン療法は血液データなどをしっかり見ながら、慎重に行う必要があります。また元来、血栓症がある人や、その素因のある人には、この治療法は行えません。

もしホルモン療法を選んだ場合、治療を始めて6カ月経っても、がんがまだ残っているようなら、お子さんをあきらめ、子宮摘出の手術を受けたほうがよいと思います。

ご相談はご主人からですが、最終的に判断されるのはご本人である奥さんだと思います。ホルモン療法の効果や副作用、危険性と妊娠・出産の気持ちなどについて、ご夫婦で今1度よく話し合って、ご決断ください。

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