子宮肉腫の疑い。開腹手術を勧められているが、針生検での診断は可能か

回答者:関口 勲
栃木県立がんセンター 婦人科医長
発行:2009年1月
更新:2013年12月

  

近くの婦人科クリニック紹介先の病院で検査をしました。その結果、「子宮肉腫の疑いが否定できない」とのことで、開腹手術を勧められています。自分なりに集めた資料では、針生検で診断できると書いてありました。針生検で、正確な診断は可能なのでしょうか。

(滋賀県 女性 54歳)

A 子宮肉腫は多発性が多く、針生検による診断は難しい。出血のリスクも

子宮肉腫は、子宮の筋肉から発生する悪性腫瘍です。良性腫瘍の子宮筋腫の手術後の病理組織検査で、1パーセント程度で子宮肉腫が発見されるといわれています。

子宮頸がんや子宮体がんなどは、子宮表面を被う上皮から発生するため、細胞診や組織診で術前の診断は可能ですが、子宮肉腫は、上皮の下や中にある筋肉から発生するため、術前の診断は困難です。

肉腫は、(1)増殖が速い(2)発見時に腫瘍が大きい(3)血中のLDH(乳酸脱水素酵素)が高い(4)MRI検査では腫瘍の境界が不明瞭で腫瘍の内部の不均一性が目立つ――などの特徴があります。しかしながら、血液検査や画像診断でも術前の正確な診断は不可能です。そして、一般的には、子宮筋腫の手術をしたあとの病理組織検査で発見されます。

針生検による子宮肉腫の診断方法は、経膣的に子宮頸部から筋腫や肉腫の中に長い針を刺して組織を採取して行います。国内の一部の施設で行われていて、良い結果が報告されており、障害も少ないようです。ただし、この検査には、いくつか課題があります。子宮筋腫や子宮肉腫の半分以上は多発性であり、1個の腫瘍を検査して調べても、診断は難しいといえます。

すべての腫瘍組織を採取できるかどうかという課題もあります。また、子宮の筋肉には、血管がたくさん集まっています。そこに針を刺して行うわけですから、出血などのリスクを伴います。

今後、この検査方法の研究が更に進んで、一般的な診断方法になれば、素晴らしいことだと思います。臨床現場で普及させていくためには、検査の安全性や精度などを明らかにしていく必要があります。残念ながら、現時点では、この検査は、標準的なものとはなっていませんから、どこの病院でも受けられる検査ではありません。

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