子宮肉腫の手術で卵巣、卵管、リンパ節の切除の必要は?

回答者:関口 勲
栃木県立がんセンター 婦人科医長
発行:2009年1月
更新:2013年12月

  

職場で下腹部に激痛が走り、出血もあったため、すぐに病院に行きました。子宮筋腫とのことで、日帰り手術を受けました。ところが、手術後の病理検査の結果、子宮肉腫とわかり、開腹手術を提案されています。子宮、卵管、卵巣を切除し、骨盤内と大動脈に沿ったリンパ節を取り除く手術とのことです。卵巣を切除すると手術後にホルモンバランスが崩れたり、リンパ節を取り除くとリンパ浮腫などに悩まされるようです。卵巣や、リンパ節は切除しなければならないのでしょうか。負担のかからない手術方法を選びたいと思います。

(福井県 女性 44歳)

A 卵巣、リンパ節への転移は少なく、必ずしも切除の必要はない

子宮筋腫はいろいろな場所にできます。相談者は、有茎性筋腫というタイプで、おそらく子宮の出口から子宮が出てくる筋腫分娩を、手術で膣の側からもぎとるような形で切除したのでしょう。この手術は、日帰り手術も可能です。そして、子宮筋腫の疑いで切除したら、子宮肉腫だったということなのだと思います。

子宮肉腫の基本術式は、子宮全摘、両側付属器(卵巣・卵管など)切除術です。しかしながら、矛盾するようないい方ですが、子宮肉腫では、卵巣を必ずとらなければならないということではありません。

子宮肉腫の再発率や5年生存率は、卵巣を切除した場合と卵巣を残した場合とでは治療成績に差はあまりみられず、卵巣を切除すれば、生存率が向上するわけではありません。子宮肉腫が卵巣に再発することはほとんどないのです。

子宮肉腫は、子宮摘出術後に初めてわかることが多く、卵巣を切除していないことも当然あります。閉経前で、子宮切除時に子宮と卵巣との距離が十分にあり、子宮と卵巣をつなぐ卵巣固有靭帯を余裕を持って切除できる状況であれば、卵巣は残してもよいと思います。

また、リンパ節の切除も意見の分かれるところです。

一般的に子宮肉腫は、子宮頸がんや子宮体がんなどの上皮性のがんとは違い、リンパ節転移は低いといわれ、子宮肉腫の場合、リンパ節転移よりも肺や肝臓などへの血行性転移のほうが多いといわれています。

CT、MRIなどによるリンパ節転移の疑いや、手術中に腫大したリンパ節が発見された場合は、それらのリンパ節の生検が望ましいですが、リンパ節転移を疑う所見がなければ、リンパ節を切除する必要はないでしょう。

相談者は44歳で、子宮筋腫の切除後に子宮肉腫がわかったとのことですから、卵巣の温存は可能です。リンパ節の切除も不要かと思います。

術後の病理検査で肉腫ではなく、がん肉腫という診断がなされることがあります。がん肉腫は肉腫の成分に加え、上皮性の腺がんなどのがんの成分が含まれます。がんならリンパ行性転移が多いため、リンパ節を切除したほうが望ましいと思います。がん肉腫の可能性がある場合には、リンパ節の手術もしたほうがよいと思います。

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