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私が目指すがん医療 12
~専門職としての取り組み、患者さんへの思い~

仕事という「生きがい」を保てる体制づくりを医療者側からサポート

門山 茂 東京労災病院脳神経血管内治療科部長/治療就労両立支援センター部長
取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2015年5月
更新:2019年7月

  

かどやま しげる 1985年日本医科大学卒業。東京労災病院脳神経外科等を経て、2009年職業復帰・両立支援センター主任研究者、2012年脳神経血管内治療科部長。2014年兼務にて、治療就労両立支援センター部長

治療と仕事の両立が難しいなどで、がん罹患後に離職する人はまだまだ多い。そんな中、東京労災病院は2012年、治療就労両立支援センターを設け、関連病院との協力体制のもと、がん患者さんの治療と職業の両立支援を始めている。同センター両立支援部部長としてがん分野を担当する医師が、門山茂さんだ。

がん患者さんの仕事復帰の不安を多職種でサポート

がん患者さんと管理栄養士の面談。各専門職がコーディネーターと協力して支援する

同院では、がん患者さんの職場復帰などの問題を支援する就労支援チームが活動している。

「医師、薬剤師、看護師、MSW(医療ソーシャルワーカー)、リハビリスタッフ、栄養士、事務職などからなる多職種チームです。患者さんは、がんの病名告知の時点から就労支援チームからの支援をいつでも受けられます。患者さんに適した専門背景を持つチームスタッフが相談にあたり、企業との調整の必要があればコーディネーターにつなぎます」

全国の労災病院の事業母体である労働者健康福祉機構は、がんなど4つの疾患の罹患者に対する治療と就労の両立支援のモデル事業を14年から5カ年で行う計画だ。同院を含む全国9つの労災病院には治療就労両立支援センターが設置され、このモデル事業のための職場復帰や両立への支援の調査研究を担っている。

「当センターは、がん、メンタルヘルス不調、脳卒中の3つを担当しています。計画の2年前から先行研究を開始し、就労支援チームが活動を行ってきました。その中で、この『就労支援コーディネーター』という役割が必要であることが見出されたのです。

患者さんの職場復帰に対する『不安』を解消するためには、その人の病気や症状に合わせた個別的な配慮が必要です。例えば、胃がんの術後は、一度に必要量の食事を摂れないため、食事休憩を何度かに分けたり、在席での間食が必要なことがあります。大腸がんなどでは、いつでもトイレに気兼ねなく行ける配慮が望まれます。

一方、企業側ではがん罹患者の再雇用において、どのように働いてもらえるのかという『懸念』を持っています。『就労支援コーディネーター』は、この『不安』と『懸念』を調整によって解消していきます」

コーディネーターは主にMSWなどが担う。チームなどからの依頼を受け、職場復帰に問題を抱える患者さんに代わって、または同席のもと、企業側との調整にあたる。

「例えば、2週間に1度の通院なら、1日の有給休暇を半日ずつ2日に分けて取得できるような仕組みが必要です。ただ企業側は、そのような仕組みの必要性をあまり認識していない。温度差がある中では、患者さんからの強い要望を受けた場合に、企業側が防御的になることも考えられます。また、病状や要望を説明し調整していくためには、一定のスキルが必要となるため、人事・労務の知識を備えた就労支援コーディネーターが必要なのです」

治療と仕事の情報をわかりやすい書式で共有

「両立支援計画表」という書式が、同じく先行研究で開発された。これは患者さんと企業の情報共有に欠かせないツールだ。

「通常の診断書には、どれくらいの期間加療が必要かが記されます。ただ、企業側が知りたいのは、患者さんがいつごろからどの程度、従来の仕事に戻れるかであり、それには患者さんの職種やさらに仕事内容についての詳しい情報が必要です。主治医がこれらの書類作成を短い診療時間で行うのは困難です。そこで診断書に代えて、新しく開発されたのが、治療の方針・方法、期間、いつごろ働けるかなどを可視化した『両立支援計画表』です。ここには、患者さんの不安と企業の懸念にかかわるメッセージも盛り込まれます」

門山さんは就労支援の実例のデータ集積にも取り組んでいる。検索できるタイプのマニュアルに仕上げ、一般労災病院や、いずれは一般施設での活用を目指す。

「いまは60歳を過ぎても働き続け、仕事を通じた生きがいを持てる時代です。高齢者ががんになっても、なるだけ仕事との両立を行って、経済的な自立のもとで治療を続け、その人らしい生活を続けていける体制づくりに貢献したいと考えています」

いまHOTな話題 ― 治療と仕事両立の優良な取り組みを表彰!

東京都はがん対策推進計画に基づく取り組みの一環として、昨年(2014年)、がん患者の治療と仕事の両立に関して企業が行う取り組みを募集。今年3月6日に、第1回の表彰が行われました。優秀賞を受賞したのは、総合建設業、サービス業、医療・福祉企業など、幅広い業種です。時差出勤、治療目的の休暇・休業、失効年次有給の積み立て等、様々な利用可能な勤務配慮、相談しやすい環境など、表彰企業の取り組みの内容は、「事例紹介集」としてまとめられ、東京都福祉保健局のホームページから「治療と就労の両立支援」を検索すると閲覧できます。

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