「第2のグリベック」誕生へ──8月には助成研究が決定
リレー・フォー・ライフから、がん患者が求める新薬を!

出席者:小西 宏 日本対がん協会マネージャー広報担当
アグネス・チャン リレー・フォー・ライフ横浜・実行委員長
坂下千瑞子 リレー・フォー・ライフ全国実施事務局ボランティアスタッフ
撮影:向井 渉
発行:2012年9月
更新:2013年9月

  
小西 宏さん

こにし ひろし
公益財団法人日本対がん協会マネジャー(広報担当)。関西大学卒。産経新聞社を経て、朝日新聞社入社。広島、福井、大阪、福岡などで医療や原発などを中心に取材。東京本社科学部デスクなどを経て、2008年より現職

アグネス・チャンさん

アグネス チャン
歌手・エッセイスト・教育学博士。香港生まれ。72年、「ひなげしの花」で日本デビュー。上智大学を経て、カナダのトロント大学を卒業。89年、米国スタンフォード大学に留学し、教育学博士号取得。07年9月に右乳房にがんを発見。リレー・フォー・ライフに参加した直後だった。今年9月に開かれるリレー・フォー・ライフ横浜では実行委員長に就任。日本対がん協会「ほほえみ大使」

坂下千瑞子さん

さかした ちずこ
大分県生まれ。92年大分医科大学を卒業後、東京医科歯科大学第1内科に入局。血液内科医。05年、背骨に腫瘍が見つかり、手術を受けるも2度再発。入院中に知った「リレー・フォー・ライフ」の日本初開催の報道を見て共感。芦屋での第2回大会の運営実行委員に。08年には実行委員長として大分大会を開催。現在は、リレー・フォー・ライフ全国実施事務局スタッフとしても活躍している

「リレー・フォー・ライフから画期的な新薬を!」と、プロジェクト未来について熱く語り合った3人

「リレー・フォー・ライフから画期的な新薬を!」と、プロジェクト未来について熱く語り合った3人

「リレー・フォー・ライフ」で集めた募金をがんの研究助成に使う「プロジェクト未来」と呼ばれる新しいプロジェクトが始まりました。
これはがん研究への患者参画といえるものです。
このプロジェクトに詳しい、今年のリレー・フォー・ライフ横浜の実行委員長であるアグネス・チャンさんをはじめ、3人が集まってこのプロジェクトへの熱い思いを語ってもらいました。

リレーに参加したからこそ早期発見できた

編集部  がんの患者さんが中心となってがん征圧をめざすチャリティウォークイベント、「リレー・フォー・ライフ」も今年で7年目。今年は大ニュースがありますね。集まった募金をがんの研究助成に使う、つまり、がんの患者さんが自ら治療法や新薬の開発にかかわる「プロジェクト未来」が始まるというニュースです。また、アグネス・チャンさんは「リレー・フォー・ライフ横浜」の実行委員長に就任されています。アグネスさんが「リレー・フォー・ライフ」に最初にかかわったきっかけは?

アグネス  06年、NHKの「生活ほっとモーニング」にゲスト出演したとき、つくばで開かれた第1回リレー・フォー・ライフの模様が紹介され、患者さんが連帯する姿に感動しました。それで翌年、第2回のリレー・フォー・ライフ(兵庫県芦屋市で開催)に参加しました。みなさん素晴らしい生き方をしていて、胸一杯で帰宅したら、10日後、自分の胸にしこりを見つけたの。いつもなら放っておくのに、無意識にがんに対する危機感が高まっていたのでしょう。気になって病院に行き、早期発見になった。リレー・フォー・ライフに参加していなかったら、今もしこりを持ったままだったかも。リレー・フォー・ライフに助けてもらいました。

集まって歩くだけ。なのに、力になる

小西  リレー・フォー・ライフは本当に感動しますね。感動を生み、寄付金を集め、仲間も作れる場は、日本に今までなかったです。

アグネス  リレー・フォー・ライフを最初にアメリカで始めたお医者さんは、「24時間走るから、皆さん募金してください」と走りました。それが感動を与え、全米イベントになって、がん研究の大きな原動力になった。毎年全米で5千回も開かれ、すごいお金が集まるのよね。

坂下  最近では年に約6億ドルも集まります。

アグネス  リレー・フォー・ライフのキーワードは3つあり、1つは「セレブレート」。患者さんが集まり、生きていることはうれしいねと祝いあう。2つめは「リメンバー」。亡くなった人を家族や友人が偲ぶ。3つめが「ファイト・バック」。私たちは負けない。これが原動力になるの。
私も自分ががんになり、もう1度リレー・フォー・ライフに行ったら、気持ちが違いました。がんになったのは悪いことじゃない。ここからがスタートだし、私にも何かできるはず。そんな気持ちになります。
で、リレー・フォー・ライフは何をやるかというと、ただ集まって歩くだけ。なのに力になる。貴重なんです。

同じ思いをもった仲間がいる

小西  坂下先生はアメリカ留学中にがんを発見されたのですね。

坂下  はい。そして、帰国後に手術を受けました。翌年再発し、化学療法を受けているとき、第1回リレー・フォー・ライフが開催されたというニュースを見て、「ぜひ行きたい!」と強く思いました。がん患者さんが、「がんでもいいじゃん」という横断幕をもって、笑顔で元気に歩いているんです。
正直、まわりの友人や家族がサポートしてくれていても、いつも自分だけ世の中から切り離されたように感じていましたが、リレー・フォー・ライフでは同じ思いを乗り越えた仲間が見つかると思いました。だから、「絶対に行く!」と決心して、第2回の芦屋の実行委員になりました。そして、いつも支えてくれる家族や仲間と歩くことができました。

気持ちを集めると奇跡が起こるんだ!

小西  リレー・フォー・ライフは06年に試験的に始まり、07年2カ所、08年6カ所と順調に増え、今年は40カ所近くで開催が見込まれています。当面の目標は全都道府県で必ず1カ所は開催されるようにすることですね。
そして、いろいろな立場の人が連携し、新しい治療の開発につなげたい。お金も人も必要です。研究者のみなさんにもリレー・フォー・ライフに参加していただき、10円20円と集めて研究に投じているところを目で見て、研究に向かってほしい。

アグネス  人に頭を下げてお金をくださいというのは、つらいことですよ。でも、今年の横浜でも、実行委員になって募金に取り組む人が増えている。毎日報告が入り、みんな一喜一憂します。私の夫も毎日、「今日も電話しなくちゃ」と電話しています。
がんのサポートでは(乳がん支援の)ピンクリボンが有名ですが、リレー・フォー・ライフも認知度をもっと上げたい。全国の上場企業が「今年はどこに寄付しよう」と思ったとき、リストにリレー・フォー・ライフの項目が入っているようになったらうれしいね。
他にも、会場には来ないけど、飲み屋でお釣りを募金するという人や、おばあちゃんががんで亡くなったから、がんをなくしたいとお小遣いの100円を入れてくれる子も、みんな気持ちは参加している。
そう、1番大事なのは気持ちを集めること。気持ちを集めるとね、奇跡が起こるんだ! 気持ちで集まったお金は、絶対いい結果につながります。だから、私はプロジェクト未来にすごく期待しています。


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