長谷川記子の心と体の特効薬
咳を鎮めるアロマで介護者も幸せに
はせがわ のりこ
星薬科大学薬学部卒業。
香りや予防医学への興味から、ヨーガ・薬膳・ハーブのアロマテラピーを研究。
薬剤師、アロマテラピスト。著書『ガンを癒すアロマテラピー』(リヨン社)
アロマオイルが欲しい方、アロマのカウンセリングを受けたい方は、サプリメントスタジオ「Joy Heart(ジョイハート)」にお問い合わせくださ
い。専門薬剤師がアドバイスいたします。「ジョイ ハート」はこころと体の両面からあなたの健康をサポートします。カウンセリングは予約制です。
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ユーカリ
空気が乾燥する冬は、肺がんの患者さんにとってつらい季節です。この季節になると、私は肺がんの患者さんたちに咳を鎮めるためのアロマオイル・トリートメントをして差し上げることが多くなります。
数年前のことですが、カフェレストランを経営されている方の奥さんが乳がんになり、同じ年にお母さんも肺がんになりました。奥さんは手術をして、無事に退院されましたが、60代のお母さんはすでに末期で食欲も落ち、咳が止まらない状態でした。奥さんはたまたまアロマテラピーの本を読まれ、アロマの力でなんとか咳を鎮められないかと、私のところへ相談に来られたのです。
こんな場合に効果を発揮するのがユーカリのエッセンシャルオイル(精油)です。
ユーカリはオーストラリアの先住民の民間薬で、ミント系のスッとした香りです。ユーカリに含まれるユーカリプトールという成分には抗炎症作用があり、胸の奥の痛みを伴う咳をやわらげます。さらにユーカリには、落ち込んだ気持ちを元気づける作用もあります。
トリートメントオイルはユーカリの精油3滴と血管を広げる作用のあるラベンダーの精油を3滴、これにスイートアーモンドオイル30ccを混ぜて作ります。私がこのお母さんにトリートメントをして差し上げると、すぐに効果が現れ、せきや血痰が止まり、とても喜んでいただけました。
このほかに洗面器の中に熱湯を入れ、ユーカリの精油を4滴ほど加えて蒸気を吸入する方法も効果的です。この場合は大きめのビニール(ゴミ袋を切ったもの)を頭からかぶって蒸気を逃がさないようにします。
もう一つ、寒い季節にがん患者さんにおすすめの精油はティートリーです。ティートリーは渋みのある木の香りで、殺菌、抗菌、消毒にすぐれ、天然の抗生物質とも呼ばれています。39度前後のぬるめのお風呂に6滴入れて温まると、風邪などの感染症予防に役立ちます。ティートリー4滴、ユーカリ2滴、スイートアーモンドオイル30ccを混ぜ合わせたトリートメントオイルは殺菌・抗炎症作用にすぐれています。
このお母さんのお宅では「私が乳がんになったとき、お義母さんにとてもやさしくしてもらったから」と、お嫁さんが熱心に蒸気吸入やトリートメントをして差し上げたそうです。ユーカリにはデオドラント(消臭)効果もあるので、介助をする側も気持ちよくトリートメントをしてあげることができます。
嫁姑でありながらお二人の関係はとてもうまくいき、「あなたが家に来てくれてよかった」とお母さんはお嫁さんに感謝の気持ちを伝えたそうです。介護をされるお嫁さんの思いやりが、アロマを通してお母さんに伝わったのでしょう。お嫁さんの手はまさに癒しの手となったのです。