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患者さんの活力・免疫力を高めるシイタケ菌糸体の研究
乳がんホルモン療法をサポートするサプリメントの最新研究

監修:鈴木信孝 金沢大学大学院医学系研究科臨床研究開発補完代替医療学講座特任教授
取材・文:本多容子
(2011年7月)

乳がん術後ホルモン療法にシイタケ菌糸体のサプリメント摂取を併用し、安全性と効果を評価する臨床試験が実施された。
その結果、患者さんのQOL(生活の質)と免疫力は上昇する傾向がみられた。本来のがん治療にも影響を及ぼさない可能性が高いという。

医師がサプリメントのアドバイスをするために

このほど石川県能美市の芳珠記念病院で乳がん術後ホルモン療法中の患者さんにサプリメントを併用してもらい、その安全性と効果を調べる臨床試験が約2年かけて行われ、結果が発表された。試験に使われたサプリメントは「シイタケ菌糸体()」だ。

結果は、シイタケ菌糸体が、がん患者さんが摂るサプリメントとして適している可能性があることを示すものとなった。

この試験を計画、実現させた金沢大学大学院医学系研究科臨床研究開発補完代替医療学講座特任教授の鈴木信孝さんに、試験の詳細と背景をうかがった。

鈴木さんは、日本で数少ない補完代替医療(サプリメントのほか、鍼、灸、アロマテラピー、音楽療法なども対象)講座を02年に開設し、活動してきた。日本補完代替医療学会の理事長でもある。

鈴木さんが行った試験は、実際のがん治療と同時に行われている。なぜサプリメントとの併用試験を実施したのか。

「それは、がん患者さんの多くが、医師に相談せずにさまざまなサプリメントを飲んでいるという現状があるからです」

1つ以上のサプリメントを飲んでいるがん患者さんの割合は、01年の厚生労働省調査で約40パーセント、現在は60パーセント以上とされる。

サプリメントの中には、がん治療の効果を妨げる作用があるものも含まれる可能性がある。しかし、患者さんが治療に影響がないか心配して医師に尋ねても、医師は教育課程でサプリメントについて学んできておらず、薬のようにデータも添えられていないので、自信を持って相談に答えられないのだという。

だからこそ、鈴木さんは、サプリメントの臨床データをそろえることで、医師がサプリメントについても、患者の相談に真摯に応える体制を築く重要性を訴えている。

シイタケ菌糸体=シイタケ培養室内で専用培地に植え、安全に培養。5カ月間育成して、根の部分の菌糸体を成長させ、有用成分エキスを 抽出、顆粒化したもの

「シイタケ菌糸体」を選んだ理由とは

鈴木さんは、金沢大学の付属病院で「補完代替医療外来」を開設、さらに地域の基幹病院である芳珠記念病院でも補完代替医療外来を担当してきた。そこで鈴木さんは、同外来の中でもサプリメントに関する相談が最も多い、乳がん術後ホルモン療法中の患者さんを対象に、安全性や臨床効果などのデータが充実している数少ないサプリメントの1つ、シイタケ菌糸体の併用試験を行うことにしたのだ。

「大学病院でなく、多くの患者さんに対して標準治療を行う地域の基幹病院で臨床試験を行い、臨床医に経過や結果を見てもらうことにもこだわった」という。

シイタケ菌糸体を選んだ理由について、鈴木さんはこう話す。

「複数の大学医学部や小林製薬などの製薬会社が10年以上研究を続けているため、安全性データが充実していることへの信頼があります。さらに、05年に山口大学で、乳がん術後の補助化学療法にシイタケ菌糸体摂取を併用する臨床試験が行われ、体力や免疫力の低下の緩和効果が報告されていたことが、このサプリメントを選んだ直接の理由でした」

安全性が確認され、活力と免疫力がアップ

では、今回の乳がんホルモン療法へのサプリメント併用試験の詳細を見てみよう。

試験期間は12週間。対象は、乳がん術後でホルモン療法()を行う20人。平均年齢は56歳(40歳~74歳、閉経後が主)。最初4週間はホルモン剤のみ、続く8週間はホルモン剤とシイタケ菌糸体(毎日1.8グラム、水や白湯で服用するか、味噌汁などに入れて摂取)を併用した。

試験中、食物アレルギーを多く持つ1名に発疹が出たが、中止後すぐに回復した。ほかに検査・診察で問題はなく、いくつも食物アレルギーを持つ方は注意が必要だが、シイタケ菌糸体はホルモン療法自体に影響を及ぼさない可能性が高いといえる。

試験結果で特徴的なのが、QOLスコア(国際標準の日常生活評価)の上昇だ。QOLスコアとは、国際標準で定められたQOL(生活の質)に関する質問項目について患者さん自身が記入票に書き、数値化して評価するというものである。今回は、試験開始前、開始後4、8、12週目の全4回回答してもらったところ、シイタケ菌糸体の併用中はQOLの総合スコアで上昇する傾向がみられた。とくに「元気」「疲労感」「エネルギー」など「活力」の点数が上がった(図1)。

[図1 シイタケ菌糸体摂取によるQOLスコア(活力)の変化]
図1 シイタケ菌糸体摂取によるQOLスコア(活力)の変化
シイタケ菌糸体摂取4週後(試験8週目)に、QOLスコア全体が有意に上昇。中でも、「元気」「疲労感」などを評価する「活力」項目の点数が大きく上昇した

もう1つの特徴が、免疫力の向上。試験開始時に免疫力が低かった6人は、シイタケ菌糸体の服用で正常レベルまで数値が戻ったとみられるのだ(図2)。

[図2 シイタケ菌糸体摂取による免疫力の変化]
図2 シイタケ菌糸体摂取による免疫力の変化
IFNγ(インターフェロンガンマ)=がん細胞を攻撃する免疫細胞が生み出す免疫活性化物質の1つ。数値が高いと、がんに対する免疫力が高い
IL-10(インターロイキンテン)=免疫反応を抑える免疫抑制物質の1つ。数値が高いと、がんに対する免疫力が低い
IFNγ/IL-10IFNγとIL-10の産生比。IFNγ(良)とIL-10(悪)のどちらが強いかを表す数値で、数値が高いほうが、がんに対する免疫力が高い

シイタケ菌糸体摂取前の免疫値が低い患者さんでは、摂取後に免疫値が正常レベルに上昇し、がんに対する免疫力が高まったとみられる

体内でがん治療が効果をあげても、患者さん自身が無気力ではトータルで元気とは言い難い。

「患者さんの日常の元気さを表す活性項目と免疫力についてプラス効果がみられた意義は大きい」と鈴木さんは話す。

現在、鈴木さんは、試験結果を広く臨床医が参考にできるように論文化を進めている。また、この結果を、金沢大学の付属病院と芳珠記念病院の補完代替医療外来でも、患者さんからの質問の回答に活用していく予定だ。

「まだ20症例の臨床試験ではありますが」と鈴木さん、「これは決して小さな1歩ではないと思いますよ」と微笑んだ。

使用ホルモン剤:タモキシフェン(商品名ノルバデックスなど)、トレミフェン(商品名フェアストン)、アロマターゼ阻害剤<アナストロゾール(商品名アリミデックス)、レトロゾール(商品名フェマーラ)>


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