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シイタケ菌糸体に注目

「免疫抑制細胞」を抑えて体内の免疫力でがんと闘う

監修:原田 守 島根大学医学部免疫学教室教授
取材・文:伊波達也
(2013年5月)


免疫を高める研究をしている原田守さん

手術、薬剤、放射線というがんの3大治療に加え、第4の治療として免疫療法がある。そのなかでも、今注目されているのは、免疫力を高めるだけではなく、免疫力の働きを妨げてしまう「免疫抑制細胞」を抑え込もうという研究だ。











現在、がん治療といえば、手術、薬剤、放射線という3大治療が選択される。しかし、がんで亡くなるほとんどのケースは、原発巣(もとのがん)が原因ではなく、3大治療のあと、再発転移を繰り返すことで身体が痛めつけられ、衰弱するためである。がん患者さんがこの再発転移と闘うためには、「免疫力」が大切だとわかってきた。免疫力が低下していると、治療後にも潜んでいる微小ながん細胞により、再発・転移を起こす可能性があるからだ。

「免疫力の発揮は治療第2幕」

[図1 標準治療後の免疫反応の強弱による生存率の違い]

「私はがん治療について、化学療法や放射線治療などは “第1幕”。治療後に残ったがん細胞から出たがん抗原に対して免疫力が発揮され、その後の再発・転移を防ぐのが“第2幕”と考えています」

島根大学医学部免疫学教室教授の原田守さんは話す。

治療の後に残った微小ながん細胞を、患者さんの内なる免疫力が攻撃することで治療の効果をフォローするのだ。

「がん細胞が壊れて体内に放出され炎症が起こると身体は危険が起こっていることを察知して免疫を活性化させます。この免疫反応の強弱が治療予後に関連しているとわかってきたのです」(図1)

2007年に、免疫反応の強弱の違う280人の乳がん患者を検証した欧米の研究では、免疫が強い人の方が再発しにくいというデータが出ている。つまり、がん治療で再発転移予防を考える場合、体内での免疫を活性化することが、治療の効果を高めることなのだ。

免疫が活性化されている状態を維持

[図2 免疫抑制細胞が免疫細胞を無力化させている]

では、どうやって患者の免疫力を高めればよいのか? 近年注目されているのが免疫抑制細胞(制御性T細胞など)を抑えるというアプローチだ。

そんな免疫抑制細胞の増加を抑える成分として「シイタケ菌糸体」と呼ばれるキノコ類の成分に注目が集まっているそうです。この「シイタケ菌糸体」の有用性に着目した谷川さんは現在、製薬企業と共同で臨床研究を進めています。

「免疫抑制細胞とは、がんが発症するとともに増加して、免疫を無力化してしまう細胞です。免疫力が低下すると再発転移を起こしやすいため、患者さんの身体のなかの免疫抑制細胞を抑え、免疫が活性化されている状態を維持することが重要。がん治療では、患者さんの免疫力を破綻させるようなことはしないと同時に免疫抑制細胞も抑え込むことが大切なのです」(図2)

患者さんの体内で免疫ががん細胞を攻撃できる状態にするには、異常に増加した免疫抑制細胞をいかに減少させるかが重要となるのだ。

シイタケ菌糸体に有用性

[図3 シイタケ菌糸体は免疫抑制細胞を抑える]

現在、原田さんは小林製薬と共同でシイタケ菌糸体抽出物(以下、シイタケ菌糸体)の免疫抑制細胞に対する有用性の研究を実施している。

「シイタケ菌糸体はがんを直接叩くわけではありません。しかし、我々はシイタケ菌糸体ががん治療の効果を弱くする免疫抑制細胞の異常な増加を抑えて、免疫細胞が働くのを助ける作用があるということを、マウスのがんのモデル試験で明らかにしました」(図3)

免疫抑制細胞は、健康な人の体内では、過剰な免疫反応にブレーキをかけて、自己免疫疾患にならないようにする大事な役割を果たしているが、ひとたびがんになると異常に増え、がんをたたく免疫細胞までも抑えてしまう。このように免疫応答は“諸刃の剣”なのだが、シイタケ菌糸体は、がんによって異常に増えた分だけ免疫抑制細胞を抑える性質があるため安全性も高いという。

この原田さんの報告に基づいて、人を対象にした臨床試験の結果も出てきている。消化器がんや乳がんなどの患者さんがシイタケ菌糸体を摂取することによって免疫抑制細胞の上昇を抑えたという報告だ。



シイタケ菌糸体抽出物=シイタケのいわゆる根にあたる部分の菌糸体を固形培地で培養し、培養物を抽出したエキス

シイタケ菌糸体の利点はQOLの維持

シイタケ菌糸体の利点は、免疫に有用なだけでなく、QOL(生活の質)も維持できることだという。

「がんの患者さんは、体力が弱り免疫力も下がっているため、合併症や感染症などで亡くなることもあるので、とくに高齢者などは免疫力を落とすような過激な治療ではなく免疫を活性化できるやさしい治療も重要です。また、手術後の抗がん薬治療や放射線治療をおこなう時に併用して、治療の後押しをする役割にも向いていると思います」

今後も免疫抑制細胞に着眼した研究成果が増え、さらに人を対象にした科学的根拠を明確にできる比較試験が実施されると、さらなる展望が開けてくるだろうと原田さんは期待する。

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