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腫瘍が60%以上縮小した例も

切除不能・再発胆道がん治療の新たな選択肢となるか⁉ インライタによる単剤療法が先進医療として進行中

監修●岡野尚弘 杏林大学医学部内科学腫瘍内科助教
取材・文●伊波達也
発行:2017年8月
更新:2019年7月

  

「切除不能・再発胆道がんに対するインライタ単剤療法には期待が持てます」と語る岡野尚弘さん

現在、切除不能・再発胆道がん治療で保険承認されているのは、ジェムザール、TS-1、シスプラチンの3剤のみ。2次治療の標準治療も確立されていないのが現状だ。そこで現在、標準治療確立に向けて、先進医療として行われているのが、腎細胞がんですでに承認されているインライタによる単剤療法だ。なかには非常に奏効した例も見られているという。

GC療法が1次治療の標準治療

肝臓で作られた胆汁(脂肪の消化を助ける消化液)は、胆のうで濃縮されて蓄えられ、胆管を通って十二指腸に流れ出る。この胆汁の通り道にあたる胆道にがんが発生するのが、胆道がんだ(図1)。

基本的には腫瘍を切除することが、根治(こんち)するための唯一の治療法となるが、早期発見が難しく、発見された時点で手術ができない進行した状態になっているケースも多い。また、手術ができたとしても再発しやすいのが特徴だ。

「胆道がんには、発生母地によって①肝内胆管がん②肝外胆管がん③胆のうがん④乳頭部がん――と基本的には4つの種類があり、これらをまとめて『胆道がん』と総称して呼ぶことが多いです。ただし、『胆道がん』と言っても、肝内胆管がんは、肝臓の中に発生するがんですし、生物学的なプロファイルが異なる可能性があるのも事実です。

ただ、胃がんや肺がんと比べて、胆道がんの患者数は少なく、それぞれ臨床試験を組むことが難しいため、現在は症例数の観点から、これら4つを『胆道がん』と一括りにして、治療開発しているのが現状です」

そう話すのは、杏林大学医学部内科学腫瘍内科助教の岡野尚弘さんだ。

現在、手術できない進行・再発胆道がんの1次治療は、ジェムザールとシスプラチンの2剤を併用するGC療法が標準治療となっている。

「イギリスで行われた、『ABC-02試験』という大規模なランダム(無作為)化第Ⅲ相試験で、それまでの標準治療であったジェムザール単剤との比較により、全生存期間(OS)において、ジェムザールとシスプラチンの2剤併用が有意に上回ったため、GC療法は標準治療として認められました。

日本人においても、ランダム化第Ⅱ相試験である『BT22試験』において同様な結果が出たため、GC療法は切除不能・再発胆道がんの1次治療の標準治療として保険承認されています。

両試験とも総じて全生存期間は11カ月ほどと、ジェムザール単剤に比べ、3~4カ月程度延びていることがわかっています」

GC療法で用いられるシスプラチンは、他のがん種で使用される場合と比べて低用量で行われるが、それでも腎毒性があるため、75歳以上の高齢者や腎障害のある人の場合などには、適応を慎重に見極めなくてはならない。

また、外来での治療が可能だが、シスプラチンによる腎毒性を軽減させるために、2L程度の輸液が必要となり、ほぼ1日がかりの治療となってしまうことがデメリットとしてあるという。

ジェムザール=一般名ゲムシタビン シスプラチン=商品名ブリプラチン/ランダ

図1 胆道の構造

GS療法の開発も進む

一方、日本を中心に現在検討されているのが、シスプラチンの代わりにTS-1を使用するGS療法だ。

「私たちが所属しているJCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)では、まず『JCOG0805』というランダム化第Ⅱ相試験において、TS-1単剤とGS療法(ジェムザール+TS-1併用)を比較したところ、GS療法において有意差はなかったものの生存期間が延びる傾向にあり、有望な治療法であることが明らかになりました。

そこで、次の段階として、現在GS療法(ジェムザール+TS-1併用)とGC療法(ジェムザール+シスプラチン併用)とを比較する『JCOG1113』というランダム化第Ⅲ相試験を行っているところです」

GS療法で用いるTS-1は経口薬のため、治療に要する時間はジェムザール点滴時間のみで、ほぼ1時間で終わってしまう治療であり、GC療法と比べて治療時間は大幅に短縮される。現在行われている第Ⅲ相試験の結果によって、GS療法のGC療法に対する非劣性(劣っていないこと)あるいは優越性が示されれば、患者の負担軽減という意味で、GS療法は広く行われる可能性も出てくるという。

「GS療法は、日本限定で行われる治療法にはなりますが、期待が持てる併用療法だと思います」

GS療法とGC療法を比較した「JCOG1113」試験は、すでに登録は終わっており、あとは結果を待っている状況だという。

TS-1=一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム

インライタによる先進医療を実施

このように、現在切除不能・再発胆道がんの1次治療では、ジェムザールを中心とした治療が行われているが、治療を続けていくうちに、段々と効果が見られなくなってしまうのが現状だ。

「GC療法の場合、だいたい6カ月ほどで効かなくなってしまうケースが多いです。そうなった場合、2次治療をどうするかということが重要になりますが、胆道がんでは2次治療におけるランダム化第Ⅲ相試験は行われておらず、標準治療が確立されていないのが現状です。

実際には、TS-1が日本では胆道がんの治療として保険承認されていますので、〝みなし標準治療〟という形で、TS-1単剤による治療を行っていることが多いです」

現在、日本で胆道がんの治療として保険承認されているのは、①ジェムザール②TS-1③シスプラチン――の3剤のみ。この限られた3剤をどう上手く使用していくかというのが、切除不能・再発胆道がん治療の現状だという。

そうした状況下において、岡野さんらのグループが、2次治療の標準治療確立を目指して新たに行っているのが、すでに腎細胞がんで承認されているインライタ単剤による治療だ。現在、先進医療Bの枠組みとして臨床試験(第Ⅱ相)を行っている(図2)。

「ジェムザールに効果が見られなくなった切除不能あるいは再発胆道がん患者さんを対象に、1日2回、朝・晩とインライタによる単剤治療を行っています。

インライタは、腫瘍の増殖や血管新生に関与するVEGF(血管内皮増殖因子)受容体を選択的に阻害する薬剤ですが、過去の手術検体で、VEGFの発現が予後に関連するという報告があり、マウスによる基礎研究でも、インライタを投与することによって腫瘍が縮小するといったデータが出たことなどから、この臨床試験を実施するに至りました」

現在、先進医療Bとして、同院と国立がん研究センター中央病院、神奈川県立がんセンターの3施設で実施しており、今後、国立がん研究センター東病院、がん研有明病院、東京大学医学部附属病院が新たに加わる予定だという。

切除不能・再発胆道がんに対するインライタの有効性と安全性を検討し、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として奏効割合(RR)、全生存期間(OS)などを見ていく方針だ。

インライタ=一般名アキシチニブ

図2 切除不能・再発胆道がんに対するインライタを用いた先進医療の概要

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