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免疫抑制状態を改善する「シイタケ菌糸体」
がん患者さんの免疫状態が、治療の成功に影響する免疫の最新研究

監修:原田 守 島根大学医学部免疫学教授
取材・文:文山満喜
(2012年7月)

原田守さん
がんと免疫に関する
研究を行っている
原田守さん

第33回癌免疫外科研究会(5月18日開催)で、島根大学医学部免疫学教授の原田守さんはがん治療を成功に導く免疫の最新研究を発表しました。免疫が無力化されてしまう、がん特有の「免疫抑制状態」に対しての取り組み方を報告します。

患者の免疫状態が転移・再発のしやすさに影響

がん治療において、患者さんの免疫力を底上げすることは大変重要です。

実は、抗がん剤・手術・放射線治療の成功も、患者さんの免疫状態が影響を及ぼしていることが様々な研究によって明らかになってきています。

5月18日に開催された癌免疫外科研究会で島根大学医学部免疫学教授の原田守さんは、最新研究結果から、がん患者さんにとっての免疫状態の重要性を説きました。

がんの治療に、患者さんの免疫状態が大切なことを示した最新研究の1つとして、転移していない乳がん患者さん280人を対象に、術後治療を行った後の転移・再発の有無を比較した臨床研究が報告されています。

この研究では、手術後にアンスラサイクリン系()の抗がん剤と局所の放射線治療を行い、免疫力が通常レベルの患者さんと免疫力が弱い患者さんの2グループに分けて比較したところ、術後に同じ治療を行っても免疫力が弱い患者さんのほうが転移・再発しやすいことが示されました。

「免疫力が弱い患者さんが転移や再発しやすいというこの研究結果は、がんに対する治療効果を上げることと免疫が深く関係していることを意味しています」

[図1 免疫状態ががん治療後のがんの増殖に及ぼす影響]
図1 免疫状態ががん治療後のがんの増殖に及ぼす影響

原田さんは、さらに、抗がん剤・放射線治療後の患者さんの免疫状態とがんの増殖との関係を示した図を使って解説します(図1)。

免疫力が健全な患者さんのグループでは、多くの人で、がん治療後にがんの増殖が抑えられます。反対に、免疫力が低下している患者さんのグループは、がんが増殖してしまう人が多くなります。

「免疫力が低下していると、色々な治療法でがんを攻撃しても、再びがんは増殖してしまいます。つまり、がん治療を進める上で患者さんの免疫状態が非常に重要で予後にも影響すると考えられるのです」

これまでのがん治療では、患者さんの免疫状態はあまり考慮されてきませんでした。しかし、患者さんの体の中では免疫が「無力化」された免疫抑制状態になっていることがわかってきました。がんにより、免疫を抑制する物質が増加し、がんを攻撃できる免疫の働きが抑制されてしまうためです。

患者さん自身が本来持っている免疫力を高めるためには、免疫抑制状態を改善し、免疫ががん細胞を攻撃できる体の状態にすることが大切になります。

アンスラサイクリン系=細胞内の遺伝物質であるDNA、RNAなどの合成を阻害する種類の抗がん剤。アドリアシン(商品名)やファルモルビシン(商品名)など

免疫抑制物質を減らす「シイタケ菌糸体」の力

がんを攻撃する免疫の働きを維持し、免疫力を底上げする1つの方法として現在注目を集めているのが「シイタケ菌糸体」の力です。

「シイタケ菌糸体」はシイタケの根にあたる部分を培養して有用成分を抽出したもので、β-グルカン、α-グルカン、アラビノキシランなど多様な免疫調整成分を含んでいます。これまでの研究では、がん患者さんに経口摂取してもらった臨床試験があり、免疫の活性化、QOL(生活の質)の改善、免疫抑制酸性タンパク質の減少などの研究成果が報告されています(図2)。

[図2 シイタケ菌糸体の主な臨床研究報告]
対象 方法 結果 出典
消化器がん
化学療法
1クールを化学療法単独、
2クール目にシイタケ菌糸体併用
化学療法副作用軽減 Okuno K Asian
Pac J Cencer
Prev;12:1671-4.
2011.
胃がん/大腸がん
食道がん
乳がん
化学療法
1クールを化学療法単独、
2クール目にシイタケ菌糸体併用
QOLの向上
NK細胞活性化
LAK細胞活性化
免疫抑制酸性タンパク質の低下
Yamaguchi Y
2011AJCM;
39:451-9.
2011.
乳がん
術後補助
化学療法
1クールを化学療法単独、
2クール目にシイタケ菌糸体併用
QOLの向上
NK細胞活性化
白血球数の増加
Nagashima Y Gan
To Kagaku Ryoho
;32:1550-2.2005.
シイタケ菌糸体には、化学療法(抗がん剤)を行った患者さんが経口摂取することで、副作用軽減やQOLの向上、NK細胞やLAK細胞などの増加により、免疫力の向上が報告されている。また、免疫抑制酸性タンパク質の低下から免疫抑制解除作用も示唆されている

今回、原田さんは小林製薬との共同研究で、シイタケ菌糸体が、免疫抑制状態を改善することを明らかにしました。大腸がんを移植したマウスにシイタケ菌糸体成分を経口摂取させ、腸管から産生される免疫抑制物質量と腫瘍重量を測定。シイタケ菌糸体を摂取させた場合の免疫抑制物質の量は、健康な(非がんの)マウスとほぼ同等でした。つまり、がん細胞を攻撃する免疫の働きが抑え込まれず、維持できたというわけです。

また腫瘍重量も、シイタケ菌糸体を経口摂取させたマウスは、非摂取のマウスと比較して腫瘍重量は少ないという結果が得られました(図3)。

[図3 免疫抑制状態を改善するシイタケ菌糸体の作用(マウスモデル)]
図3 免疫抑制状態を改善するシイタケ菌糸体の作用(マウスモデル)
大腸がん細胞を盲腸に移植し、シイタケ菌糸体を配合した餌を14日間摂取させ、腸管の免疫抑制物質量と腫瘍重量を測定した結果、シイタケ菌糸体を摂取した群のほうが腫瘍重量は少なかった

「患者さんの免疫状態を改善するシイタケ菌糸体は、抗がん剤・手術・放射線治療などと組み合わせて使用することで、がんの転移・再発を制御したり、良好な予後を維持する、などのがん治療をサポートする効果が期待できるでしょう。」と原田さんは話しています。


詳しい研究内容はこちらへ
 シイタケ菌糸体研究会  
 小林製薬のがん免疫研究


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