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緩和ケアで大きな役割を担う疼痛治療

「WHO方式がん疼痛治療法」を指針に鎮痛薬を選択・使用

監修●大坂 巌 静岡県立静岡がんセンター緩和医療科部長
取材・文●町口 充
発行:2014年4月
更新:2017年12月

  

「鎮痛薬をどのように使うか
が大事」と語る大坂 巌さん

緩和ケアの中で大きな役割を担っているのが、がんに伴う痛みを取り除いたり、和らげたりする疼痛治療。痛みのほとんどは鎮痛薬を適切に使うことで治すことができるが、中でも強い鎮痛効果を発揮するのが医療用麻薬であるオピオイドだ。そもそもがんの痛みはどんな痛みなのか、オピオイドで「麻薬中毒」にならないのかなど基礎知識編――。

Q1 がんの痛みとはどんな痛みですか?

がんに伴って起きる痛み(がん性疼痛)には大きく分けて3つの種類があります。その1つは、がん自体が起こす痛みです。例えば骨への転移や臓器への浸潤により生じる痛みなどです。

2つ目はがんの治療に伴う痛みです。手術の痛みのほか、抗がん薬の中には末梢神経に痛みを起こすものがありますし、放射線治療でも痛みを伴う場合があります。放射線自体は痛みや熱さは感じなくても、放射線を照射した部位にしばらくしてから痛みが出てくることがあります。

3つ目は全身衰弱に伴って生じる痛みです。寝たきりのための筋肉や関節などの痛み、褥瘡の痛み、免疫力低下で起こしやすい帯状疱疹後の神経痛などがこれに当たります。

Q2 痛みはどれも同じような痛みですか?

痛みの性質によって3つに大別されます。

1つは、骨転移があったときの骨の痛みとか、手術後の傷の痛みとか、痛む部位がはっきりとわかる限局した痛みで、これを「体性痛」と言います。

次に、何となくどこかしら痛いというような、比較的広い範囲で感じる痛みで、「内臓痛」と言います。体性痛と内臓痛を併せて「侵害受容性疼痛」と呼ぶこともあります。

もう1つが「神経障害性疼痛」と呼ばれるもので、いわゆる「神経の痛み」。腫瘍が大きくなって神経を圧迫し、その刺激によってしびれを伴う痛みを起こしたりします。薬の副作用でも起こり、とくに分子標的薬や一部の抗がん薬は神経障害性疼痛を起こしやすいと言われています。

痛みはパターンによっても違いがあります。一定のレベルでずっと続く痛みが「持続痛」で、定期的に薬を使うことで抑えることが可能です。これに対して、持続痛を薬で抑えていても一過性に痛みが強く現れることがあり、これを「突出痛」と呼んでいます。この場合、基本の処方では抑えられない突発的な痛みであるため、「レスキュー・ドース」といって、追加的に鎮痛薬を投与します。

Q3 がんの痛みを取る方法として「WHO 方式」があるそうですが?

図1 WHO方式3段階除痛ラダーがん疼痛治療法

表1 WHO方式がん疼痛治療法の5原則

痛みの治療では鎮痛薬をどのように使うかが大事になりますが、WHO(世界保健機関)は「WHO方式がん疼痛治療法」をガイドライン(指針)として示しています。その中で鎮痛薬の使用法として、痛みの強さによる鎮痛薬の選択ならびに鎮痛薬の段階的な使用法を「3段階除痛ラダー」として示していて、これに基づいて治療するのが基本となっています。「ラダー」とは「階段」とか「はしご」の意味です(図1)。

「3段階除痛ラダー」で用いられる鎮痛薬は、医療用麻薬であるオピオイド鎮痛薬と、一般的な消炎鎮痛薬などの非オピオイド鎮痛薬、それに抗うつ薬、抗けいれん薬などの鎮痛補助薬です。

ラダーは3つのステップ(段階)に分かれていて、ステップ1の軽度の痛みには非オピオイドを使うことを推奨しています。ステップ2(軽度から中等度の痛み)では非オピオイドに加えて比較的弱いオピオイドを、ステップ3(中等度から強度の痛み)では非オピオイドに加えて強い作用を持つオピオイドをというように、痛みの強さに応じて薬を段階的に使い分けていきます。

また、鎮痛補助薬はもともとの薬理作用には鎮痛作用を有しないものの、鎮痛薬と併用することにより鎮痛効果を高める役割を持っており、各段階で非オピオイドやオピオイドと並行して使ってよいことになっています(表1)。

Q4 オピオイドを使って「麻薬中毒」になる心配はありませんか?

オピオイドに対しては、いまだに「麻薬中毒になる」などの誤解を持っている人が多いようです。このため、日本では欧米などと比べてオピオイドの使用頻度が少なく(図2)、がんの痛みに苦しむ患者さんが依然多いと言われています。

確かに、オピオイドの代表的なものにモルヒネがあり、それで「麻薬中毒」を連想してしまうのでしょう。しかし、「麻薬中毒」とは、症状(痛み)などないにもかかわらず、自己制御できずに薬物を使用する依存症を指します。しかし、痛みを取るためにのみオピオイドを使う限り、麻薬中毒になることはありませんし、体がボロボロになるとか、死期を早めるようなこともありません。適切に使用すれば、安全で効果的なのがオピオイドです。

図2 医療用麻薬消費量国際比較

モルヒネ、フェンタニル、オキシコドンの合計
(100万人1日あたりのモルヒネ消費量換算[g])

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