わたしの町の在宅クリニック 15 出水クリニック

最期まで「生き切る」ことのお手伝いをしていきたい

取材・文●増山育子
(2015年7月)

  
地域の診療所などとも連携して在宅患者さんをサポートする出水クリニック院長の出水明さん
出水クリニック

〒596-0046 大阪府岸和田市藤井町1-12-5 エアリーズ上野1F
TEL:072-437-5811 FAX:072-437-5836
URL:www.demizu-c.or.jp


出水(でみず)明さんが院長を務める出水クリニック(大阪府岸和田市)は、外来診療と並行して在宅診療を行っている。慣れ親しんだ家の中では患者さんではなく、家族として自分が果たす役割があり、それが結果的に患者さんが最期まで「生き切る」ことにつながるのではないか――。出水さんはそのためのお手伝いをしていきたいと話す。

外来時から患者さんとつながり 在宅への移行がスムーズに

大阪府岸和田市にある出水クリニック。地域の診療所とも連携し、24時間、365日対応できる体制をとっている

出水さんは会社員を経て医学部に入り、麻酔科医になった。ペインクリニックを標榜する民間病院で在宅医療に取り組むうちに、自分が動くことで患者さんの役に立つ在宅ケアに魅かれていったという。

「家族の歴史が染み込んでいる〝家〟という場所に出かけるのが楽しいし、自分は痛み治療の専門医でもあり、家で過ごしたいというがん患者さんの痛みを取って在宅をサポートしようと、外来診療と在宅診療を半々で行うクリニックの開設を考えました」

そして1996年5月に開業。以降「診てくれる医者がいないから家に帰れないということがないように」と、小児がんを含む末期がんから神経難病、高齢者まで地域のあらゆるニーズに応えてきた。

15年4月までの19年間で、在宅導入患者数866人(その内がん患者さん506人)。在宅看取り数485人(同378人)と、がん患者さんに限ると、在宅での看取り率は8割くらいに及ぶ。

「当院のような外来・在宅ミックス型診療所のメリットは、痛みの緩和や病院ではしにくい相談などを外来緩和ケアという形で始めて、在宅へ移行できることです」と出水さんは話す。

このような形だと、医師と患者さんとの人間関係もできており、経過を共有していることから在宅への導入がスムーズで、ほとんどの場合が在宅での看取りになるという。趣味の登山に例えて、出水さんはこう話す。

「在宅で最期までという思いがあります。もちろん無理はできませんが、患者さんとご家族というパーティが在宅療養という荷物を背負って、汗を流しながら山を登っていきます。大変なこともありますが、自己決定という自由があります。そのパーティが遭難せず山頂にたどり着き、家で過ごしてよかったと言えるようにサポートするのが我々の仕事だと思っています」

24時間365日対応を可能にした 看護師と地域の診療所間の連携

勤務医時代の経験から、看護師の存在が鍵になると考えていた出水さんは、院内訪問看護にこだわってきた。開院当初2人だった看護師は、現在8人が在籍。そのうち5人が常勤で24時間対応を担っている。

「医者が行くより看護師が行くほうが患者さんやご家族にとってハッピーという状況がたくさんあるし、看護師さんからの情報がないと、医者は次のステップを考えにくいです。自院の看護師さんだと毎朝45分間カンファレンスができ、同じカルテを見て共通理解ができるというのは何事にも代えがたいものです」

一方、365日対応を可能にするために出水さんが探った道は、診療所と診療所の連携、いわゆる「診診連携」だ。出水さんが04年、中心となって立ち上げたのが、地域の診療所間連携システム「岸和田在宅ケア24(www.hck24.com)」。岸和田市と忠岡町にある7つの在宅療養支援診療所が連携して、365日在宅患者さんに対応できるよう、地域の在宅ケアの受け皿を構築した。

具体的には、医師不在時の待機依頼や、主に看取りのバックアップ体制を取ることがその役目になっている。とくに厳しい規約は設けず、医師同士が顔見知りという緩やかなネットワークだが、在宅緩和ケアに対する考え方が近い診療所同士が連携した組織であり、患者さんにとってみれば何かあった場合にいつでも対応してくれるという、安心感につながっている。

家の中だからこそ 家族としての役割がある

乳がんで亡くなった患者さんの家族から寄贈された絵画。その患者さんとは毎日のように話し込み、出水さんが在宅医療に進むきっかけになった患者さんの1人だという

「施設の壁のシミは不潔に感じても、家の壁のシミは懐かしく愛おしい」と、出水さんは「家の魅力」を強調する。慣れ親しんだ家の中では「患者さん」ではなく、家族として自分が果たす役割がある。

「末期の患者さんにとって何が支えになるかを考えると、家族や医療介護スタッフなどとの人間関係ではないかと思っています。例えば小学生の子どものいるお母さんなら、食事は作れなくてもいつも通り、お帰りと声をかける。そんなふうに『いつお迎えが来るかもしれないけれどやれるだけのことはやっておこう』と前向きになることが病気に負けずに『生き切る』ということにつながるのではないかと思っています。そのためのお手伝いをさせていただきます」

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