わたしの町の在宅クリニック 17 ホームケアクリニックこうべ

明るい看取りを目指して 地域で患者さんを診る

取材・文●増山育子
(2015年9月)

  
「明るい〝看取り〟ができるようサポートしていきたい」
と語る五島正裕さん
ホームケアクリニックこうべ

〒650-0027 神戸市中央区中町通2丁目3-2 三共神戸ツインビル8F
TEL:078-371-3902 FAX:078-371-3903


クリニックの名称には院長の名前が入っていることが多い。「ホームケアクリニックこうべ」の院長・五島正裕さんがあえてそうしなかったのは「五島クリニックという院長色の強いクリニックではなく、看護師や非常勤医師、スタッフたち皆で取り組んでいるという意味を込めたかったから」だという。
そして2011年4月の開業以来、地域に根づいた在宅医療を推進するため、奔走する日々が続いている。

最期は家族の時間 明るい在宅看取りの原風景

JR神戸駅前のビルの一室にある
ホームケアクリニックこうべ

病院勤務の外科医時代、五島さんは家で最期を迎えたいという末期がん患者さんの退院に付き添った経験がある。そのとき患者さんの家で見た光景が、五島さんにとって在宅看取りの原風景である。

「夜中だったのですが、家に着くと灯りがついていました。人がたくさん集まっていて『おかえり』と出迎え、患者さんは声にならない声で『ただいま』と。ワイワイ賑やかで子どもが走り回っていて、皆、笑顔です。翌朝早くに亡くなられたのですが、あのまま病院にいたら暗い病室での寂しい臨終だったでしょう。それが家ではあんなに明るい最期を迎えられました」と五島さんは振り返る。

病院では患者さんとのお別れが近づいても家族は遠巻きに眺めているだけで、自分たちで何もできない。五島さんにはそれがその人との最期の時間を過ごすのに相応しいとは到底思えない。

「最期の時間はご家族のものです。お別れが近づくにつれて点滴も必要なくなり、することに限りが出てきますが、何もせずに見ているのはご家族にとってつらいことです。ですので、ご家族には部屋の空気を入れ替えるとか手を握るとか、声をかけるだけでもいいので役割を作ってそれをしていただき、最期の時間を過ごしてもらいます」

別れは悲しいけれど、家族は泣いたり笑ったりして「この人を見送った」という充実感に満ちた笑顔を浮かべることができるのが在宅看取りだと、五島さんは言う。

開業初年度52件だった在宅看取りは、その後多い年では80件を超え、看取り全体の6~7割となっている。

「僕たちの看取りは『明るい看取り』。その人のあるべき形で見送ってあげたいし、ご家族には苦しいこともあったけれど、それを振り返って次に進んでいけるような看取りの場を作ることをお手伝いしたいです」

訪問診療専門クリニック「ホームケアクリニックこうべ」には、昨年(2014年)度127人の患者さんが紹介されてきた。訪問患者数は月80人程度で、その6~7割が末期がん患者さんだ。

患者さんにとって治療の終わりではない

クリニックを訪れた患者さんとご家族の話をじっくり聞くことから在宅緩和ケアは始まる。前医に見放されたと堰を切ったように話し出す患者さんや涙を流す家族もいる。積極的に在宅を選んだというよりも退院せざるをえない状況で、不安を抱える患者さんと家族に、五島さんは「本当に患者さんのことを考えていること、最期まで一緒にいること」をまず伝える。

「病院での抗がん薬治療が終わったとしても、がんを相手にした治療は続きます。痛みを取って生活を快適にする治療が長生きにつながるということ、がんを相手にする治療は続くことをお話しします。肉体的に生き抜くことをサポートし、その人らしく生きることを支えるわけです」

ただ、全ての人が在宅で最期を迎えることがいいわけではない、と五島さんは指摘する。尊重しなければならないのは患者さんの気持ちだからだ。

「『家族に迷惑をかけるくらいならひっそりとどこかで死にたい』とおっしゃる患者さんもおられます。ならば迷惑をかけていると思わないような環境作りをするわけですが、その人の思いを遂げるという意味では入院するほうがいい場合もあります。ただ、実は迷惑をかけたくないと思っているのは本人だけで、家族は患者さんのために何かしてあげたいと思っていることもあります。そういう食い違いを調整していくのも僕たちの役目です」

地域で取り組む在宅緩和ケアを目指して

2年前からみなしで訪問看護を始め、今年5月に訪問看護ステーションを立ち上げた。在宅緩和ケアを支えるのは看護師の力だと
五島さんは言う

神戸市では開業医の連携が進んでいることも助けとなり、現在クリニックでは地元の緩和ケア医が非常勤として入り、複数の医師で連携して診る体制が整っている。また、五島さん自身、神戸市立医療センター中央病院に非常勤医として週1回勤務する。

さらに「在宅緩和ケアを支えるのは看護師の力」と、
五島さんは今年5月、訪問看護ステーションを立ち上げた。

「病院でもうすることはないから在宅へと言われて困り果てている患者さん、ご家族が大勢います。そういう人たちを減らすために、地域で診て、明るく見送れるようにしていきたい」と五島さん。そんな地域作りに向かって活動は続く。

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