わたしの町の在宅クリニック 19 しんじょう医院

がんのプライマリケア医として 患者さんに必要な治療の提案も

取材・文●増山育子
(2015年11月)

  
「専門的な治療に携わらなくても患者さんに必要なケアは何かを提案できる、がんのプライマリケア医が必要です」と語る新城さん
しんじょう医院

〒651-1131 兵庫県神戸市北区北五葉1-5-1 ハピネスプラザ307
TEL:078-597-6029 FAX:078-330-8084
URL:www.shinjo-clinic.com/kobe/toppupeji.html


しんじょう医院(神戸市北区)院長の新城拓也さんは、脳外科・内科を経て緩和ケアの道に進み、病院の緩和ケア病棟で10年勤めた後、2012年に開業した。体の調子が悪く、病院に通えなくなった患者さんに対して新城さんは、「通院を止めるのはつらいことですが、その機会に地元の医者とつながることは大事だと思います。ここならば具合が悪ければ僕が行きますと言えますから」と語る。

受け入れ先の確保など 状況の変化に応じた準備も欠かさない

神戸電鉄・西鈴蘭台駅下車。ビルの3Fにあるしんじょう医院

がん患者さんの訪問診療と外来診療を行っている新城さんのもとには、他の病院で化学療法や放射線治療を続けている患者さんも多く紹介されてくる。

「化学療法と化学療法の間に自宅で養生して体力の回復を待っている患者さんを訪問するケースもあります。外来からスタートし、通えなくなったので僕が家に行くようになり、その後入院するか迷ったけれど、気がついたら最期まで家にいたという感じです」と新城さんは言う。

反対に在宅での看取りを希望していても入院することはあるし、また紹介されてはきたものの、本心ではこちらに来る気はないといった場合には、治療を継続できる転院先やホスピスを提案する。

「病状や気持ちの変化で最終的な場所が決まるだけ。事前に話し合って決めていても変わることも多いのが実情なので、次の準備ができていることが大切です」

新城さんはそのときのために受け入れ先の病院を確保し、そこで医療者と良好な関係を維持していくことに力を注ぐ。

「入院した患者さんのところへ必ず繰り返し訪れて、スタッフと言葉を交わします。自分の患者さんを診てもらっているのですから、受け入れ先の病院の医師や看護師には敬意を持ち、患者さんに代わって自分が相手に義を尽くすことを心掛けます。また、整形外科や皮膚科など自分の専門外の相談ができる知り合いも必要ですので、週に2回は他院で働きますし、医療者の勉強会にも積極的に参加しています」

そういうスタンスで活動しているため、多くの患者さんを診ることはできない。ひと月の患者数は、訪問が約30人、外来で約10人、在宅看取りは月3人ほどだが、患者さん1人ひとりの薬を全て覚えられ、じっくり関わることができるちょうどよい数なのだと新城さんは話す。

目的のない会話から ニーズを見つける

新城さんは患者さんや家族と対話するときに「特定の情報を得るための会話はあまりしない」。例えば痛みの話をしていた患者さんが途中で「遠方に住む娘がよく電話をかけてくる」、「娘は優しいが、仕事が大変そうだ……」というふうに違う話題に移っていっても、修正せず、流れのまま自由に娘さんの話をしてもらう。

ばらばらな話でも整理すれば、痛みはあっても他の話になるくらいだからすぐ手を打って欲しいのではないのだろう、離れて暮らす娘さんは様子がわからず心配して電話をかけてくるようだが、患者さんの気掛かりは娘さんの仕事のこと……、といったことがわかってくる。

「そんな目的のない会話、つまりおしゃべりの中に患者さんや家族の心配事や不安に思うことが浮かび上がってきて、どんなケアが必要なのかが見つかります。患者さん自身、緩和ケアを受けるという体験を想像できないと思います。そこが他の科と違うところで、今から何をしますと約束するのではなく、痛みを取り除いたり、食欲不振やだるさをどうしようか、患者さんの状態をどうにか良くしようという積み重ねで、自然と緩和ケアが提供されていくわけです。つまりそれと意識しなくても、『あなたにとって最善の治療を考えます』という流れの中で、自然と緩和ケアが施されるのです」

必要なのは がんのプライマリケア医

しんじょう医院では、1人ひとりの患者さんとじっくり向き合ったケアが施されている

新城さんは「緩和ケアを提供する医療者は、がん治療について広く浅く知っておく必要がある」と指摘する。

「緩和ケアを提供しているというより、がん患者さんの治療やケア一般を引き受けていると考えています。ですので、患者さんが化学療法を希望するなら病院を探してあげたらいいし、まだ化学療法の余地があるのではないかといったことを相談できたりするような、専門的な治療に携わらなくても何でも知っていて、患者さんにとって最適な治療は何か、必要なケアは何かを探ることができる、がんのプライマリケア医が求められていると思います」

新城さんは兵庫県内で初めて「ホスピスカー」を導入した。普段の訪問診療で使う車に「緊急往診車」のステッカーを貼り、緊急時には救急車のようにサイレンを鳴らして患者さんの元に駆けつけることができる。そんな新たな試みも取り入れながら、新城さんの活動は続く。

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