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痛いときに自分ですぐに鎮痛薬の投与ができる
スイッチ1つで痛みを緩和 秘密兵器、電動式PCAポンプとは?

監修:飯嶋哲也 山梨大学医学部付属病院医療チームセンター長
取材・文:文山満喜
(2012年7月)

飯嶋哲也さん いち早く電動式PCAポンプに
目をつけ、痛みの治療に取り組む
飯嶋哲也さん

痛みを感じたときに、ナースコールを押すことなく、患者さん自らが鎮痛薬を投与できる「電動式PCAポンプ」という 自己調節鎮痛法をご存知でしょうか?昨年1年間で2239人の患者さんに使用した山梨大学では、電動式PCAポンプを用いた痛みのケアで、「世界で1番痛みの少ない病院」を目指しています。

国内トップクラスのPCA使用数を誇る山梨大学

[図1 山梨大学の痛みのケア]
図1 山梨大学の痛みのケア
山梨大学では、電動式PCAポンプを積極的に利用し、痛みの緩和に力を注いでいる

山梨大学医学部付属病院では、患者さんの痛みの治療に「電動式PCA()ポンプ」と呼ばれる鎮痛法が用いられています。

この方法で、2011年は年間2239人の患者さんに治療を行いました。そのうち、緩和ケアとしての使用は403人(非がん含)でした。この電動式PCAポンプの使用数は、国内でトップクラスを誇ります(図1)。

山梨大学医学部付属病院医療チームセンター長の飯嶋哲也さんが電動式PCAポンプの導入を決めたのは、十分とはいえない術後の痛みの管理の現状を目の当たりにしたことがきっかけでした。

「術後の痛み止めの仕事をしていたときのことです。痛みをなくして患者さんを手術室からお送りしているはずなのに、病棟に行ったら患者さんが痛みで七転八倒していました。病棟の責任者は主治医ですから、僕のような麻酔科医は勝手にケアをするわけにはいきません。術後の痛みのケアについて、まだまだ改善の余地があると考え、模索する中で電動式PCAポンプの存在を知ったのです」

PCA=Patient control analgesia

患者さんが自分で薬を投与する電動式PCAポンプとは?

日本では耳慣れない「電動式PCAポンプ」ですが、どのような仕組みの鎮痛法なのでしょうか。

PCAは「自己調節鎮痛法」の略で、電動式PCAポンプとは医療者があらかじめ鎮痛薬(医療用麻薬)の投与量を設定し、その範囲内で患者さん自らが、鎮痛薬を少量ずつ分割して投与することを行うことができる医療機器のことです(写真2)。

投与方法は現在、静脈内投与、硬膜外投与が主流となっています。

投与量は、痛みを抑えるために必要な量が投与される「基礎持続投与量」、それに加えて患者さんが痛みを感じたときに、自分でスイッチを押すことで投与される「ボーラス()投与量」、ボーラス投与後、すぐにスイッチを押しても薬剤が投与されない安全な時間「ロックアウト間隔」(不応期) という3つのパラメータによって設定されています(写真3)。

[写真2 PCAポンプ]
写真2 PCAポンプ
スイッチは、力を入れずに簡単に押すことができるが、誤操作を防ぐためにくぼみ部分にスイッチがある
[写真3 PCAポンプモニター]
写真3 PCAポンプモニター
投薬状況を記録できるので、痛みの把握はもちろんのこと、コミュニケーションにも役立っている

投与量の設定は、痛みのコントロールの基本となる「基礎持続投与量」は少量で設定しておき、足りない分を「ボーラス投与量」で補うという考え方です。ロックアウト間隔は、10分という時間が設定されています。

ボーラス=1回の薬物投与

電動式PCAポンプの4つの大きなメリット

[図4 電動式PCAポンプのメリット]
図4 電動式PCAポンプのメリット

医療スタッフの人手不足が続く日本では、医療者が患者さんのそばから離れることなく、鎮痛薬を必要に応じて迅速に投与するという理想の痛みのケアを行うことは現状では不可能です。そのため、安全で効率よく、患者さんにケアを行うためには、電動式PCAポンプのようなITツールの活用は有用です。

電動式PCAポンプ活用のメリットは、①迅速な痛みのコントロールが可能、②使用方法が簡便、③複数の薬剤投与が可能、④「投与履歴記録」機能により、きめ細かな投薬管理が可能であること──の4点に集約されます。

メリットの1つめは、患者さんが痛みを感じている時間を大幅に減少することです。

「従来の鎮痛処置では、患者さんが痛みを感じたらナースコールを押し、看護師が来てから鎮痛薬の投与が行われます。一方、電動式PCAポンプでは患者さんが痛みを感じたときに自分でスイッチを押すことで鎮痛薬の投与ができるのです(図4)」

また、動くたびに一過性の強い痛みがあるような場合(突出痛)、その都度経口の速効製剤を服用することは困難であり、ボーラス投与を行うことで、突出痛にも迅速な対応が可能となります。

[図5 鎮痛薬が投与されるまでの過程]
図5 鎮痛薬が投与されるまでの過程

2つめは、患者さんが痛みを感じたら「鎮痛薬を投与するためのスイッチを押すだけ」という使用の簡便さがあげられます(図5)。一方、管理する側の医療者も、投与履歴を患者さんのベッドサイドで簡単に確認できるのも大きな利点といえます。

3つめのメリットとしては、山梨大学では医療用麻薬のフェンタニル(一般名)やモルヒネ(一般名)を単独投与するのではなく、麻酔薬のリドカイン(一般名)やケタミン(一般名)を混合投与することを標準としていますが、リドカインやケタミンを混合することにより、医療用麻薬の投与量が少なくてすむ場合があります。また、がんの痛みの場合は神経障害性の要素が含まれていることが多く、作用仕組みの異なる複数の薬剤を混合投与することで鎮痛効果が高まることが期待できます。

「制吐剤や緩下剤といった多種類の薬剤を併用することが多い緩和ケアの治療において、電動式PCAポンプでは複数の薬剤を1つの薬液バッグに混合できることから、『たくさんの薬を使っている』という患者さんの心理的負担を軽減することもできます」

4つめは、薬剤が投与された時間・回数などの詳細な投薬情報を装置内に記録することができるので、それをもとにきめ細かな投薬管理が可能になる点です。

「投薬情報の記録を参考に、痛みの取れ具合など患者さんと痛みに関するコミュニケーションがとりやすくなります」


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