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増えるオピオイド鎮痛薬に、患者さんはどう対応したらよいか
飲み間違いなどのメディケーションエラーを防ぐための患者さんと家族の心得

監修:岡本禎晃 市立芦屋病院薬剤部長・緩和薬物療法認定薬剤師
取材・文:七宮 充
発行:2012年8月
更新:2013年4月

  
岡本禎晃さん 「痛みがコントロールされて
いれば、同じ薬を継続的に
使ったほうがよい」と話す
岡本禎晃さん

がん患者さんの約8割は、何らかの痛みを感じるといわれています。しかし、こうした痛みの多くは、医療用麻薬(オピオイド)を適切に使うことで和らげることが可能です。現在では様々な種類のオピオイド鎮痛薬が存在しており、飲み間違いや使い方の誤りといった事故(メディケーションエラー)が起こる危険性が増えています。これを防ぐには、オピオイドについて正しい知識を持つことが大切です。

誤用のリスクが高まっている

[図1 日本における医療用麻薬(オピオイド)の種類]
図1 日本における医療用麻薬(オピオイド)の種類

緩和ケアというと、がんの終末期の医療を連想する方が多いようです。しかし現在では、QOL(生活の質)維持のためにがんの診断時から緩和ケアが行われるようになってきました。より早期からの緩和ケア導入はQOLを維持するだけでなく、生存期間も延長する可能性があることが最近の報告で明らかになっています。

患者さんが訴える身体症状のなかでも早期にあらわれる症状として、痛みがあります。

そこで最近では、痛みの程度に応じてオピオイド鎮痛薬()をはじめとする色々な痛み止めを用いた治療が行われるようになっています。

とくに、オピオイド鎮痛薬の中には医療用麻薬に分類される薬剤もありますので、患者さんも正しい知識をもち、適正に使うことが必要です。

近年、さまざまな成分の薬剤が承認され、オピオイド鎮痛薬といってもモルヒネだけでなくオキシコドンやフェンタニルという薬剤も使えるようになっています。また、注射薬、内服薬、貼り薬(貼付剤)、坐剤とタイプも様々です(図1)。

オピオイド鎮痛薬とは : 現在日本ではモルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、トラマドール、コデインなどが使用可能である。中でも、モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルは医療用麻薬に指定されている

メディケーションエラーの危険性が増えている

こうした緩和ケアの普及は、痛みを抱えるがん患者さんにとって望ましいことですが、一方で、「オピオイド鎮痛薬の使用法の間違いなどのメディケーションエラーが増えている」と市立芦屋病院薬剤部長の岡本禎晃さんは危惧します。

「これらのオピオイド鎮痛薬は症状に合わせて使い分けたり、ほかの薬剤と組み合わせたりします。しかし、それぞれの薬剤は、用法・用量、投与間隔などがすべて違いますから、種類が増えると、どうしても誤用などの可能性が高くなってくるのです」

[図2 地域緩和ケアの普及]
図2 地域緩和ケアの普及

また、緩和ケアが入院から外来、在宅へと広がっていることも要因の1つです。最近は、緩和ケアの地域連携が進み、がん診療連携拠点病院などで治療を終えた後、後方支援病院(一般病院)や在宅へ移行する患者さんが増えています。

しかし、それぞれの施設で、採用しているオピオイド鎮痛薬の種類が違うため、転院に伴って使う薬が変わってしまうことも少なくありません(図2)。これも、メディケーションエラーを引き起こす要因になっています。

一般名での処方拡大も要因

メディケーションエラーのリスクが高まっている背景には医療側の事情もあります。

たとえば、近年の診療報酬の改定により薬剤の一般名処方が拡がってきています。医師が一般名で処方した薬剤は、薬局で同じ有効成分を含む薬剤で効能効果、用法用量が同じもの(先発品や後発品など複数ある)の中から薬剤師と患者さんが同意のもとで選択し調剤できることになっています。

同じ効き方をする複数の薬剤が存在することでメディケーションエラーにつながるリスクが高まります。

[図3 メディケーションエラーが起こりやすいケース]
図3 メディケーションエラーが起こりやすいケース

Rapid Response Report : NPSA/2008/RRR05

このようなことはオピオイド鎮痛薬の処方や調剤においても徐々に拡がりつつあります。

「痛みは感覚であるため、鎮痛効果が出はじめる時間が遅くなると、痛みがさらに強くなったり、不安につながったりして、それらが、患者さんのメディケーションエラーにつながる可能性がある」と岡本さんはいいます。

メディケーションエラーは、処方時や調剤時などさまざまな場面で起こりますが、もっとも多いのは、使用時です(図3)。

では、こうしたエラーを防ぐために、患者さんはどう対処すればいいのでしょう。

慣れた薬剤を使うことが重要

岡本さんは、まず、処方されたオピオイド鎮痛薬の名前や用量(㎎)をしっかり覚え、効果、持続時間、使い方を正しく理解することが大事とアドバイスします。そしてその上で「もっとも重要なのは、使い慣れた薬剤を継続的に使用していくこと」と強調します。

「オピオイド鎮痛薬は種類も多く身体の状態や痛みの症状によって、患者さんに1番適した薬剤を医師や薬剤師などが処方しています。ですから、それで痛みがコントロールされていれば、安易に変更せず、同じ薬を使い続けることが大切です」

痛みが増悪したなどの理由がなく薬剤を変更する場合には、医療従事者から十分な説明をうけることが大事です。今の薬剤を継続したいという患者さん側の自己防衛も大事だといえるでしょう。

もう1つは、信頼できる"かかりつけ薬局"を持つことです。薬局では処方箋を受け付けると、処方した薬剤や病歴などを記録しています。いつも同じ薬局を利用していると、薬剤師は、これをみて、「同じ種類のオピオイド鎮痛薬が重複していないか」、「飲み合わせの悪い薬剤が同時に処方されていないか」などをチェックし、調剤してくれます。

「緩和ケアへの理解が深く、気軽に相談に乗ってもらえるかかりつけ薬局を持つこと。それが、メディケーションエラーを防ぐ一助にもなる」と岡本さんは話しています。


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