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進行大腸(結腸)がん/内視鏡検査+注腸エックス線検査
隆起、ただれ、潰瘍、出血、そして、りんごの芯の形状に着目
もりやま のりゆき
1947年生まれ。1973年、千葉大学医学部卒業。米国メイヨークリニック客員医師等を経て、89年、国立がん研究センター放射線診断部医長、98年、同中央病院放射線診断部部長で、現在に至る。ヘリカルスキャンX線CT装置の開発で通商産業大臣賞受賞、高松宮妃癌研究基金学術賞受賞。専門は腹部画像診断
患者プロフィール
43歳の女性Gさん。頻繁に便秘が起こり、お腹が張って苦しく、腹痛を伴うこともあった。そのうち便秘の後、下痢になり、交互に繰り返すようになった。心配になって受診すると、横行結腸部のがんであることが判明。国立がん研究センターを紹介され、内視鏡検査と注腸エックス線検査にてがんが確認された
内視鏡像で周囲の粘膜より隆起しているのががん
Gさんは問診で症状とその経過、病歴、体調などを聞かれた後、大腸内視鏡検査を受けました。
先端に超小型カメラを搭載した内視鏡を肛門から挿入し、大腸の内腔を映し、チューブ状のスコープを経由してカラーモニターに映しだす検査で、横行結腸に早期とは呼べないがんが発見されました。
大腸は、大別すると結腸と直腸に分けられます。胃から送られた食物は十二指腸と小腸を経て結腸そして直腸、肛門へと送られるのですが、結腸はさらに右脇腹の下方から上方に至る上行結腸、右脇腹から左脇腹に横断する横行結腸、左脇腹の上方から下方へ至る下行結腸、S状結腸に分けられます。Gさんのがんは、このうちの横行結腸に発見されました。
「大腸がんのほとんどは、大腸内腔表面の粘膜から発生します。内視鏡像を見ると大腸内腔がびっしりとがんに覆われており、向かって左側、時計でいえば9時の周辺を残して、5分の4周はがんに覆われています。このように健常な粘膜に比べて盛り上がる(隆起する)のが、がんの特徴の1つです」(森山さん)
隆起を形成しないがんもあるのだそうですが、その場合、内視鏡では発見しにくいこともあるようです。
ただれ、潰瘍、出血の現れ方を統合して
Gさんの内視鏡検査画像には、他にもがんの典型的なサインが現れています。わかりやすいものを、3つあげます。
(1)びらんと示した部分の粘膜がただれているのが、おわかりになりますでしょうか。隆起に沿って、白い線が斑状に幾筋も粘膜を被っています。時計の12時から3時の部分がそうで、かなり広範に渡っています。医師は、ただれを糜爛(びらん)ともいいます。
(2)検査画像の下方には、潰瘍も見られます。
「潰瘍は胃潰瘍などの病名にもあるように、表面がくずれて陥没し、内部の組織が露出している病態をいいます」(森山さん)
(3)内腔の上方、時計の12時の付近が通常の粘膜の色より赤くなっています。
「これは、出血の痕です。その斜め下の1時の部分も、出血しているのがわかります」(森山さん)
ただれ、潰瘍、出血は他の大腸の疾患でもよく見られる症状だそうですが、それが揃っていて、しかもその現れ方を組み合わせてみると、がんかそうでないかは、検査を担当する医師にはよくわかるのだそうです。
なお出血している状態で、大腸がんの検診として知られている「便潜血反応検査」を受けると、高率で便に血が付着し、陽性の判定が出ることになります。
ただ大腸ポリープなどの良性腫瘍でも出血することがよくあるので、区別するために大腸内視鏡検査を受けるという手順もあります。出血があるというだけでは、がんとは限りません。
注腸エックス線検査でよく現れるのはりんごの芯の所見
内視鏡検査でがんの診断のついたGさんは、次に注腸エックス線検査を受けました。肛門から造影剤のバリウムを入れた後に空気を注入。エックス線(レントゲン)撮影をし、大腸全体の透視図を得ます。
「大腸の疾患を疑われるときによく行われる検査ですが、大腸がんではがんの位置や、がんに侵された臓器の形状などを見る目的で行います」(森山さん)
Gさんのケースでは横行結腸のどの部分にがんがあるのか、大腸がどれほどがんに侵食されているのか、といったことを見るのです。
すると、検査画像に奇妙な形の病変が現れたのです。
「矢印で囲んだ部分ががんに侵された箇所ですが、大腸が極端に細くなっています。りんごを丸かじりすると芯が残ってこんな形になりますが、そこから採ってこの所見をアップルコア、りんごの芯と呼びます。進行した大腸がんの注腸検査では、よく現われる所見です」(森山さん)
Gさんはその後、CTなどの検査を受け、他の臓器への転移が見受けられないことがわかり、大腸切除の手術を受け、1週間後に退院しました。手術から2年経ちますが、幸い、再発の兆候は無く、元気に過ごしています。
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