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乳がん/マンモグラフィ検査(3)
白い影が等間隔ではなく、偏って集まる傾向に着目

監修:森山紀之 国立がんセンターがん予防・検診研究センター長
取材・文:黒木要
(2009年11月)

森山紀之さん

もりやま のりゆき
1947年生まれ。1973年、千葉大学医学部卒業。米国メイヨークリニック客員医師等を経て、89年、国立がん研究センター放射線診断部医長、98年、同中央病院放射線診断部部長で、現在に至る。ヘリカルスキャンX線CT装置の開発で通商産業大臣賞受賞、高松宮妃癌研究基金学術賞受賞。専門は腹部画像診断

患者プロフィール
58歳の女性Lさん。乳房に触れると、左が右に比べて硬いことに気付き、心配になり、受診。国立がん研究センターを紹介され、乳腺専用のエックス線撮影装置マンモグラフィによる検査を行ったところ、白い微小な影が乳房全体に散在する石灰化したがんが見つかった

影の大きさが不均一

乳がんといえば、指で触れることのできるしこりを連想しますが、しこりをつくらずに微細な石灰化病変を伴うタイプがあります。

1つひとつはとても小さいので指で触れることはできず、ほとんどはマンモグラフィによる検査で発見されます。写真では微細な白い点(影)となって表わされます。石灰化は広範に広がっている場合もあれば狭い範囲にとどまっている場合もあり、さまざまです。

「石灰化を伴う乳がんは、乳汁を作る乳腺内にカルシウムが沈着することと腫瘍自体がカルシウムを産生することで起こります」(森山さん)

ただし乳房内の石灰化は乳がんのみで起こるわけではなく、乳腺症など、よくある炎症やその他の原因でも起こるので、よく観察して識別する必要があります。

識別のポイントとして、乳がん/マンモグラフィ検査(2)で挙げたのは、白い影の1個1個の大きさが均一でなく、バラバラであること、影を拡大してみると形がぎざぎざとしているなど総じて整っておらず、あたかも砕いたガラスの破片が散らばったように見えること。こういった要素が重なれば重なるほど、がんの疑いが強くなると指摘しました。

今回は、その他のポイントを挙げます。

影の集まり方に特徴

マンモグラフィ検査写真

マンモグラフィで発見された例。石灰化した病変(がん)が、乳房全体に散りばめられたように広がっている

Lさんの写真を、ご覧ください。

石灰化した病変が、乳房全体に散りばめたように広がっています。白い点々(影)が、がんです。

「こうやって石灰化した病変が散在するように広がっているものを、びまん性もしくは散在性といいます。乳房全体にがんが広がっている状態ですが、その割に悪性度はそう高くはありません」(森山さん)

びまん性の石灰化は乳がん以外の原因でも起こりますが、Lさんの写真ではがんを疑う要素がいくつもあるのだといいます。

まず注目して欲しいのが、影の集まり具合です。

乳頭付近でもその上方でもそうですが、影は等間隔ではなく、ある箇所に、または一定の区域に集まる傾向があります。

「ある箇所に集まる傾向を集簇性、一定の区域に集まる傾向を区域性といい、石灰化がこのような集まり方をしていると、がんを疑う強い要素となります」(森山さん)

次の注目ポイントは、白い影の並び方です。

中央付近あるいは上方の点々がわかりやすいかと思いますが、影が線状に並んでいるように見える部分があります。

「乳がんの石灰化は、乳汁の通り道である乳管に起こります」(森山さん)

乳管は乳腺で作られた乳汁を乳首に運ぶパイプの役目があり、そこに石灰化が起これば、その大きさにもよりますが、影が線状に並んだように見えることは当然といえば当然です。

ちなみに乳腺の炎症などで起こる石灰化すなわちがんではない石灰化は乳管内にも乳管外の組織(間質)や皮下にも発生するのだそうですが、先に挙げた集まり具合の要素を合わせるなどして、森山さんら専門家は、がんの可能性を吟味するのだといいます。

影の大きさも重要な手がかり

がんに伴う石灰化は乳管内に不整な形で発生するということですが、それならば石灰化の大きさも自ずと制約がかかります。

「大きい石灰化、専門的には粗大といったりしますが、影が粗大で整った形をしているものは良性の石灰化すなわちがんではないことが多いのです」(森山さん)

具体的な数字をいうと0.5ミリ以上であれば良性の石灰化であることが多いようで、基本的にはそれ以下の場合に、がんを疑うのだそうです。

その場合も前回指摘した影の形、あるいは今回指摘した影の並び方などを併せて吟味するのはいうまでもありません。

Lさんの石灰化は乳がんに伴うものでしたが、全身への転移は認められず、手術が可能でした。

さすがに乳房の温存は不可能で、乳房切除術(全摘手術)を受けて、現在も元気に暮らしています。