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乳がん/マンモグラフィ検査&超音波検査
超音波画像では、ゴツゴツした輪郭やモザイク模様を探し出せ

監修:森山紀之 国立がんセンターがん予防・検診研究センター長
取材・文:黒木要
(2009年9月)

森山紀之さん

もりやま のりゆき
1947年生まれ。1973年、千葉大学医学部卒業。米国メイヨークリニック客員医師等を経て、89年、国立がん研究センター放射線診断部医長、98年、同中央病院放射線診断部部長で、現在に至る。ヘリカルスキャンX線CT装置の開発で通商産業大臣賞受賞、高松宮妃癌研究基金学術賞受賞。専門は腹部画像診断

患者プロフィール
45歳の女性Iさん。近所の病院で自発的に受けた乳がん検診でがんの疑いを指摘され、国立がん研究センターを紹介された。再検査をしたところ、乳腺専用のエックス線撮影装置マンモグラフィ検査と超音波検査の双方で、右乳房にがんが発見された

早期発見に有力なエックス線検査

Iさんが近所の病院で受けた検査は、乳腺の病気を見つける専用のエックス線撮影装置マンモグラフィによる検査です。プラスチックの板で乳房を片方ずつ挟んで圧迫し、撮影します。

視診や触診で発見することの難しい小さながんでも、見つけられるという特徴があります。

「マンモグラフィによる乳がん検診は、乳がんを早期発見して死亡率を減らす効果のあることが臨床試験で確認されています。アメリカで乳がんで亡くなる人が減少しているのは、この検査が普及し、受診率が70パーセントに達していることが大きいとみられています」

マンモグラフィ検査写真を、ご覧ください。向かって左側に写っているのは乳房を挟むプラスチックの支柱で、その右側にプラスチック(これ自体は写りません)に挟まれて、楕円形になった乳房が写っています。

乳がんは、マンモグラフィでは白く写ります。矢印で示したのが、乳がんです。乳がんは乳汁を産生する乳腺によく発生しますが、乳腺もマンモグラフィでは白く写ります。

「乳腺は、その密度が濃ければより白く写ります。写真の上部は密度が薄いのでぼんやりとした白色ですが、写真の下部ではやや密度が濃いので、はっきりとした白色になっています。ただ、がんはひときわ濃い白で、きわだっており、容易にその存在を知ることができます」

超音波画像ではしこりは黒っぽく映る

Iさんは、国立がん研究センターでは超音波検査も受けました。

がん診療連携拠点病院の多くでは、乳がんの検査は視診・触診とマンモグラフィ検査、超音波検査が1セットになっています。超音波検査は、超音波を発射するプローブ(端子)を乳房に当て、中の様子をテレビモニターに映す検査装置です。腹部の検査などでもよく用いられる装置で、外来にて受けられる簡便さがあります。超音波検査では、乳がんは黒く映ります。矢印で示した箇所に、がんがあります。

「乳腺炎や良性の腫瘍なども黒く映るのですが、多くは輪郭がくっきりとしています。それに比べて、乳がんでは輪郭がゴツゴツとしています。これが、第1の特徴です」

第2の特徴は、黒い色の中に、濃いところとやや淡いところがある点です。

それはがんの成長の度合いが、部分によって違うことを表しているのだそうです。

「がん細胞の密度が濃いところはより黒く映ります。このように1つのしこりの中に濃いところと淡いところがあって、くっつけたようにモザイク模様になっているのも、がんの特徴です」

Iさんのマンモグラフィ写真と超音波写真
マンモグラフィと超音波でがんが発見されたIさん。左がマンモグラフィ写真、右が超音波写真

マンモグラフィと超音波検査を併用する理由

拠点病院などでは、なぜマンモグラフィと超音波検査を併用するのでしょうか? 実はマンモグラフィは先ほど少し触れましたが、乳腺が発達している人ではがんが隠れてしまう恐れがあるのです。それを示しているのが、Tさんの検査写真です。Tさんは36歳と若いこともあって、乳房全体に乳腺が分布しています。したがって、マンモグラフィではこのように乳房全体が白く写ります。

「このように乳腺が発達している人の場合、雪の中で白いウサギを見つけるのと同じで、がんが存在していてもそれを見つけるのは難しくなります」

Tさんの超音波検査写真では、がんの存在が、はっきりとわかります。マンモグラフィで発見できずに、超音波検査で発見された乳がんということになります。逆に超音波検査では発見されずに、マンモグラフィ検査で見つかる乳がんもあります。

「乳腺は加齢とともに脂肪に置き換わっていくので、乳腺の発達している若い人では超音波検査が、年をとった人ではマンモグラフィ検査が有用だとされています」

一般に40歳前後を境として、どちらかの検査を優先して行い、その画像が見にくい場合、もう一方の検査を足すという方法もとられています。乳腺科のある病院やがん拠点病院では、双方を行っているので心配のある人はこういった病院で検査を行うことが推奨されます。

Tさんのマンモグラフィ写真と超音波写真
Tさんのマンモグラフィ(左)写真で白く写っている部分は乳腺。右は超音波写真